研究課題/領域番号 |
24791871
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研究機関 | 北里大学 |
研究代表者 |
浅川 賢 北里大学, 医療衛生学部, 助教 (60582749)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | melanopsin / pupil / retinal ganglion cell / rod / cone |
研究概要 |
本研究の目的は,視細胞(錐体・杆体)に次ぐ新たな光受容器であるメラノプシン含有網膜神経節細胞(mRGC)の特性を明らかにしその特性を応用した他覚的眼科検査法の臨床応用を目指すことである。 平成24 年度は,げっ歯類で明らかとなっているmRGC活性の選択的波長光が,ヒトでも同様かを検討するため,健常眼に対して瞳孔反応を評価した。まず,青波長光に選択的応答する特性を再検討するため,特定の青波長光を約95%遮断する高性能フィルターを作製するとともに,光刺激の色や強さ,計測時間などが任意に変更可能な赤外線瞳孔計を試作した。次に前述のフィルターと試作機を用い対光反応を評価し,mRGC活性の最適条件を検討した。また,mRGCが概日リズムの維持を担う役割に注目し,瞳孔動揺の日内変動を測定した。 視細胞由来の対光反応評価で採用されている1秒と,羞明や涙液動態などの影響を考慮した10秒とで,赤・青刺激による対光反応を比較すると,10秒光刺激がより縮瞳する結果となった。この結果をふまえ,10秒刺激にて光輝度を段階的に変更させ,同様に検討すると,100 cd/m2で赤と青刺激による縮瞳に著明な差が見られた。また,青波長光は470 nmにピークを持つ光刺激にて顕著かつ持続的な縮瞳が得られた。さらに,瞳孔動揺は夜19時に振幅が大きくなり,特に470 nmの遮光フィルター装用時に著明であった。 色刺激光による対光反応評価はL,M,S錐体,暗順応下の杆体の影響も否定できないが,青刺激時は光刺激直後の一過性反応と刺激に対する持続的反応との差が明らかであり,少なくとも視細胞由来の反応とは異なるものと推察した。また,470 nmの波長を遮光することで瞳孔動揺が著明となったのは,瞳孔制御に関与するmRGCの特性と何らかの関連がある可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の目標であったメラノプシン含有網膜神経節細胞(mRGC)が活性される条件を明らかにすることができたため。 ただし錐体や杆体の影響も否定できないため,次年度以降は再現性を含め,mRGCの特性をより詳細に分析していきたい。
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今後の研究の推進方策 |
平成25 年度は,24年度に明らかとなった測定条件の下,眼科外来に通院中の視細胞や網膜神経節細胞が選択的に障害された症例に対して,色光刺激の違いによる対光反応を測定することで,客観的な疾患鑑別法としての有用性を検討していく予定である。 また,mRGCの選択的活性波長光が,なぜ470 nmなのかを自然光の波長成分とともに再検討し,瞳孔動揺との関連性を瞳孔反応以外の他覚的所見から研究を遂行する予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
本研究に関連する実験成果を内外問わず学会にて発表し,専門家とのディスカッションを通じて研究の意義と重要性を考え,適切な学会誌に原著論文を投稿する。 平成25年度の研究費は,その学会参加費と交通費,および論文投稿の費用に使用させていただきたい。 また,瞳孔反応以外の他覚的所見を得るための機器や備品を購入させていただきたい。
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