研究実績の概要 |
調節性眼内レンズ(intraocular lens; 以下IOL)には、毛様体およびチン小帯からの緩み力で効率的に変形する素材と形状、光学特性が求められ、使用する素材の物性、構造、調節前後の曲率半径等を最適化する必要がある。そこで、力学解析からヒト水晶体のチン小帯や水晶体嚢が水晶体形状に与える影響を調査し、また調節性IOLの力学および光学シミュレーションを行い、力学的にも光学的にも最適な設計を模索した。 光学シミュレーションは、光学設計ソフトCODE V(Synopsis, Inc.)を用いた。眼球モデルは、改良型Navarroモデルとした(Navarro R et al., J Opt Soc A, 1985)。力学シミュレーションは、有限要素法マルチフィジックス解析ツールであるANSYS Mechanical(ANSYS, Inc.)およびSolidWorks Simulation(SolidWords Inc.)を用い、構造解析を行った。過去の報告からチン小帯からの緩み力0.02 N(全周では4倍の0.07 N)の荷重をチン小帯が入り込んでいる領域に直接作用させた。断面上は、対称条件を設定し、360度の回転体モデルとした。近見30 cm位置において、良好な結像特性を得られる弾性係数を算出した。 結果、水晶体は、チン小帯付着部位や膜厚の構造・物性などを考慮するにより調節前後の構造変化が大きく変化することを明らかにした。また、近見視に必要な曲率変化型調節性IOLの物性は、弾性係数(Pa)のLog値5.0以下であることがわかった。本検討結果より、構造変化が起こる物性の範囲が明らかになり、素材の選定に有用と思われた。
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