研究概要 |
生活習慣病は今や社会的な問題であり、失明原因の上位を占める眼内血管新生疾患である糖尿病網膜症、加齢黄斑変性など、眼科領域でも注目される疾患を含む。生活習慣病では、その発症前の慢性変化が重要で、疾患予防の観点からは、発症前状態の解析が欠かせない。生活習慣病の原因として、肥満・高脂肪食があるが、肥満・高脂肪食による網膜疾患との関連は、あまり知られていない。そこで、眼内血管新生に至る基礎病態におけるNrf2の解析を行うために、生活習慣病網膜モデルを作成した。 Balb/Cマウスに高脂肪食、コントロール食餌を1ヶ月間投与し、高脂肪食動物モデルを作成した。1ヶ月後の体重、血糖は、高脂肪食群(31.8g, 138 mg/dl)で、コントロール群(27.8g, 103 mg/dl)よりも有意な増加がみられた。また、高脂肪食群では腹腔内の内臓脂肪も増加しており、生活習慣病のモデルと考えられた。血液、網膜におけるアディポネクチンの発現も、高脂肪食群でともに低下していた。 網膜における酸化ストレスをスーパーオキサイド (O2•-)を測定するジハイドロエチジウム (DHE)染色解析法で解析した。網膜におけるDHE染色は高脂肪食群で増加しており、高脂肪食によって網膜における酸化ストレスが増加することが分った。また、nrf2の発現は変化ないものの、下流遺伝子であるho-1の発現低下、gpxの発現上昇がみられた。高脂肪食群ではコントロールに比し網膜電図のa波の有意な低下を示し、視細胞の障害が示唆された。 生活習慣病の基礎病態である高脂肪食負荷によって、網膜におけるNrf2下流遺伝子の発現変化が生じ、酸化ストレスが増大し、アディポサイトカインの発現変化が生じ、網膜電図におけるa波の低下という網膜の機能障害が生じることが明らかになった。
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