我々は、培養線維柱帯細胞を使用し酸化ストレスと緑内障発症に関するメカニズムに関して検討を行っている。酸化ストレスの強さと緑内障進行とがパラレルに進行することが報告されたことや、実際に緑内障患者では線維柱帯細胞のアポトーシスが起こり、そこに細胞外マトリクスが沈着することが眼圧上昇にかかわっていることが知られたためである。そこで今回、長寿や酸化ストレス耐性に関係することが知られているsirt1遺伝子について検討を行った。正常の患者から培養した線維柱帯細胞よりも緑内障由来の線維柱帯細胞の方がsirt1遺伝子の発現が多いことをwestern blot法で確認した。また、sirt1遺伝子をsiRNA法を用いてknockdownし、酸化ストレス感受性に関してWST8 assayを行うと、sirt1を抑制した方が感受性が上がり、線維柱帯細胞においてsirt1は酸化ストレス耐性に関与することが分かった。また、sirt1遺伝子の発現メカニズムを調べるため、プロモーター領域をコンピューター解析した結果、E-box結合配列が存在することが分かり、E-box結合転写因子のひとつであるc-mycで制御されることを、siRNA法やLuciferase assayを用いることで確認した。 さらに、緑内障点眼薬であるPG製剤でc-myc/sirt1転写システムが誘導されることをwestern blot法で確認した。また、その活性化経路はPG受容体を介して行われていることを確認した。
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