研究課題/領域番号 |
24791884
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研究機関 | 公益財団法人東京都医学総合研究所 |
研究代表者 |
橘高 大二 公益財団法人東京都医学総合研究所, 運動・感覚システム研究分野, 研究員 (50623782)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 国際情報交換 |
研究概要 |
本研究では、免疫系の細胞による免疫応答が網膜神経節細胞の保護や視神経軸索の再生に与える影響を調べることで、国内での失明原因1位の緑内障や視神経炎の発症抑制ならびに治療へと応用することを目的としている。 そこで、自然免疫反応や細胞死を制御する ASK1 の機能解析を行った。ASK1 KO マウスを用いて視神経軸索損傷モデルを作製して解析を行った結果、網膜神経細胞死が顕著に減少し、光干渉断層計による経時的観察では、網膜内層の菲薄化も抑制された。また、ASK1の下流では受傷後3時間でp38 MAPKの活性がピークとなっており、受傷後すぐに p38 阻害剤を野生型マウスに眼球内投与すると、神経細胞死の減少が確認された。そして、ASK1 KO マウスでは、網膜神経節細胞からの視神経損傷後の炎症によるケモカインの産生とミクログリアの蓄積が低下した。さらに、ASK1-p38の経路を p38 阻害剤でブロックすると、ミクログリアでの腫瘍壊死因子等の産生が低下した。 次に、視神経外傷後に TLR2 のリガンドである Zymosan を眼球内投与すると、網膜にマクロファージが集積し、分泌シグナル等を介して軸索再生が促進されると考えられている。しかし ASK1 欠損マウスでは Zymosan 投与後に網膜に浸潤するマクロファージ数が減少し、軸索伸長効果も大幅に低下していた。そこでASK1の下流にある p38 と JNK の阻害剤を野生型マウスの眼球内に投与し、Zymosan による視神経再生に与える影響を検討した。その結果どちらの阻害剤でも視神経再生が抑制されたが、マクロファージの浸潤に関しては、JNK 阻害剤を投与した場合にのみ低下していた。 以上から ASK1 は視神経外傷後の神経細胞死を誘導する一方で、Zymosan によるマクロファージの浸潤と軸索再生には必要であることが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
自然免疫反応や細胞死を制御する ASK1 の機能解析を、ASK1 KO マウスを用い、視神経軸索損傷モデルを作製して解析を行った。その結果を Inhibition of ASK1-p38 pathway prevents neural cell death following optic nerve injury. Katome et al. Cell Death and Differentiation 20:270-280, 2013 として論文発表した。 また、炎症誘導による ASK1 KO マウスを用いた視神経軸索再生実験に関しても、研究実績概要で述べた新規性のあるインパクトの高いデータ収集を終え、現在投稿段階に入っている。
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今後の研究の推進方策 |
緑内障や多発性硬化症においては、視神経変性が認められるが、両疾患ともその根本的な治療法は確立していない。Dock8 は、免疫系の細胞に局在しており、これらの疾患の炎症に何らかの関与をしている可能性が考えられる。そこで、視神経軸索変性が Dock8 によって抑制・遅延されるのか、または軸索再生を促進することができるのか、 Dock8 Tg マウスおよび Dock8 KO マウスを用いて検討を行う。当研究グループは、視神経軸索の変性や再生を解析するための視神経軸索損傷の手法と多発性硬化症に類似性の高い疾患モデルとして myelin oligodendrocyte glycoprotein を利用した実験的自己免疫性脳脊髄炎 (EAE) の研究手法も確立している。 本研究では Dock8 Tg マウスや Dock8 KO マウスを用いて 視神経軸索損傷モデル動物および多発性硬化症の疾患動物を作製することにより、視神経変性に与える Dock8 の影響を in vivo で検討する。このうち、Dock8 KO マウスの EAE 実験では、視神経脊髄炎の顕著な軽症化のデータを得ており、さらに TUNEL 染色、残存オリゴデンドロサイトの定量、caspase 3などのアポトーシス実行因子の活性状態の検討、電子顕微鏡による変性軸索の定量化等を通して、Dock8 によるミエリンの保護・再生効果を明らかにしていく。そして、Dock8 KO マウスと Dock8 Tg マウスの視神経軸索損傷モデルでは、新神経損傷による網膜での細胞死や軸索の変性および再生を観察して Dock8 の影響を解析するとともに、炎症によって浸潤、集積してくる免疫系細胞に焦点を当て、神経栄養因子等の放出を real-time PCR 法で定量的に解析していく。
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次年度の研究費の使用計画 |
本研究で使用する実験動物の購入および維持管理の費用。 本研究での解析に使用するRNA 抽出キット、免疫染色や Western blotting用の抗体、細胞培養実験における培地、栄養因子の試薬購入。
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