研究課題
本研究では、免疫系の細胞による免疫応答が網膜神経節細胞の保護や視神経軸索の再生に与える影響を調べることで、国内での失明原因1位の緑内障や視神経炎の発症抑制ならびに治療へと応用することを目的としている。そこで、自然免疫反応や細胞死を制御する ASK1 の機能解析を行った。ASK1 KO マウスを用いて視神経軸索損傷モデルを作製して解析を行った結果、網膜神経細胞死が顕著に減少し、光干渉断層計による経時的観察では、網膜内層の菲薄化も抑制された。また、ASK1の下流では受傷後p38 MAPKの活性が増大しており、受傷後すぐに p38 阻害剤を野生型マウスに眼球内投与すると、神経細胞死の減少が確認された。そして、ASK1 KO マウスでは、網膜神経節細胞からの視神経損傷後の炎症によるケモカインの産生とミクログリアの蓄積が低下した。視神経外傷後に炎症誘発物質である Zymosan を眼球内投与すると、網膜にマクロファージが集積し、分泌シグナル等を介して軸索再生が促進されると考えられている。しかし ASK1 欠損マウスでは Zymosan 投与後に網膜に浸潤するマクロファージ数が減少し、軸索伸長効果も大幅に低下していた。そこでASK1の下流にある p38 と JNK の阻害剤を野生型マウスの眼球内に投与したところ、どちらの阻害剤でも視神経再生が抑制された。一方、視神経外傷後にJNK活性を促進する薬剤を眼球投与すると、マクロファージから軸索再生因子の放出が増大することにより、視神経再生が促進されることを見出だした。以上から ASK1 は視神経外傷後の神経細胞死を誘導する一方で、マクロファージの浸潤と軸索再生には必要であることが明らかになった。
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Cell Death Differ.
巻: 20 ページ: 270-280
10.1038/cdd.2012.122. Epub 2012 Sep 14.