研究概要 |
緑内障原因変異であるOptineurin(OPTN)-E50K変異タンパクを発現するE50Kトランスジェニックマウス網膜で認められる視神経節細胞の脱落と、網膜の菲薄化の原因を探るため、このマウスを用いた詳細な病態解析と、さらに分子生物学的検討と併せて、変異タンパク発現による緑内障発症病因についての検討を行った。その結果、E50Kトランスジェニックマウス網膜では、GFAP陽性となるミューラー細胞を主体とした反応性グリオーシスが増進し、変異タンパクの沈着性局在という病理学的所見が認められ、多くの神経変性疾患に特有の変異タンパクの凝集性・疎水化が関与していることが疑われた。そこで内在発現レベルでの検証のため、実際のE50K緑内障患者の末梢血より疾患特異的iPS細胞を樹立し、その細胞内でのOPTNタンパクの動態について検討を行い、疾患特異的iPS細胞由来神経細胞における、疎水性OPTNタンパクの増加と、細胞内での凝集性局在について初めて明らかにした。これらの所見をもとに、E50K変異タンパク発現時のOPTNの凝集・疎水化がどのように起こるのかについて、分子生物学的手法およびLC-MS/MSを用いたプロテオミクスによる解析を行い、E50K変異タンパクがTBK1と強い結合性を獲得していること、またTBK1阻害剤処置により前述のE50K変異タンパクの疎水化が軽減されることを見出した。以上のことから、E50K緑内障発症の根底にはこの変異タンパクが獲得したTBK1との強結合性に関連した、タンパクの異常凝集が関与していることを本研究より見出した。(Hum. Mol. Genet. 2013, Minegishi et al.) OPTN-E50K変異とその病態発症機序、内在レベルでの変異タンパク動態については長く未解明であったが、本研究によりその一端が明らかとなり、今後の治療法研究が期待される。
|