研究課題/領域番号 |
24791886
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
本多 昌平 北海道大学, 大学病院, 医員 (90588089)
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キーワード | 肝芽腫 / DNAメチル化 |
研究概要 |
肝芽腫検体パラフィン包埋切片から正常肝組織、および胎児型、胎芽型肝芽腫腫瘍組織をmacrodissectionによって分別回収し、癌抑制遺伝子プロモーター領域の異常メチル化を網羅的に解析し、DNAメチル化プロフィールを作成する。候補癌抑制遺伝子のメチル化率を臨床検体において解析し、組織型以外の臨床病理学的因子との関連について検討し、肝芽腫の予後予測因子として臨床応用されうる分子マーカーを確立することが当研究の最終目的である。 前年度までに次世代シーケンサーによるメチル化ビーズアレイと脱メチル化処理をおこなった肝芽腫cell lineの発現アレイ解析を掛け合わせることにより抽出した83の候補遺伝子のうち、これまでの研究データーおよびPublic databaseを用いて19の候補遺伝子に絞り込み、バイサルファイトパイロシークエンシング法によって実際の臨床検体(約80検体)のDNAメチル化率を測定した。上記19遺伝子のうち13遺伝子に異常メチル化を認め、それらメチル化異常と臨床病理学的因子(年齢、AFP値、PRETEXT(病型分類)、化学療法反応性)との関連を検討した。最終的に4つの候補遺伝子の異常メチル化が肝芽腫の予後不良と相関することを見出し、将来的に予後規定因子として有用な分子マーカーとして確立できる可能性が示唆されている。 Whole-exome sequencing法によるgenetic解析の代替として、Cancer Panelを用いて癌特異的遺伝子変異解析をおこなった。肝芽腫progressionに関与する明らかなgenetic異常は検出されなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
網羅的解析および臨床検体を用いたDNAメチル化解析によって肝芽腫の予後と相関する4つの新規候補遺伝子を同定した。うち2つの遺伝子はこれまでに癌抑制遺伝子としての報告がなく、更にはいずれの遺伝子もDNAメチル化異常による制御を受けることは示されておらず、今後肝芽腫の予後予測マーカーとして確立される可能性とともに、新規の癌抑制遺伝子として証明できる可能性を秘めている。 以上の成果は当初平成26年度中に達成する目標であったが、研究が順調に進み望むべく結果が得られている。
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今後の研究の推進方策 |
抽出した4つの候補遺伝子につき、in vitro解析による機能解析および発現解析をすすめ、新しい知見が得られるよう研究を継続していく。これまでの研究成果に関しては論文報告の作成を現在おこなっている。 genetic解析に関してはCancer Panelのデーターおよび最近出された論文報告などから、肝芽腫においてはgenetic異常よりもepigenetic異常がkey moleculeと成り得ると考え、上記メチル化解析を研究の主軸として継続することとする。
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次年度の研究費の使用計画 |
当初予定していた外注によるwhole-exome sequencing解析を差し控えたこと、またバイサルファイトパイロシークエンシング法によるメチル化解析にかかる費用が削減できたことが次年度にある程度繰り越すことができた理由です。 メチル化ビーズアレイ解析によって得られた情報を、化学療法抵抗性症例に焦点を合わせて解析することで、さらに新規分子マーカーの発見につながるものと考え、今回施行したmodalityを用いて同様の研究を追加して行う予定です。それに必要な経費に残額を用いることと、学会発表および論文発表にかかる費用を賄う予定にしています。
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