研究概要 |
JPLT-2プロトコールで治療された肝芽腫症213例を対象とし、肝芽腫細胞株としてHepG2に加え、高リスク群から樹立したJPHB-1,2,3を用いた。 β-カテニン(CTNNB1)異常で、エクソン3を含む欠失を107例(50.2%)に、エクソン3点突然変異は56例(23.2%)に見られた。腫瘍のテロメラーゼ活性であるRTA(relative telomerase activity)が50以上のものまた、その活性部位であるTERT(telomerase reverse transcriptase)発現が100以上の例は有意に予後不良で、CTNNB1がWild type の腫瘍はRTA, TERTの活性化していた。さらにこの両者を結合するBRG1の発現レベルは、RTA, TERTの活性化レベルと相関した。また、Wntシグナル下流遺伝子であるMYC, MDR-1, CyclinD1, Survivin, MMP7, Axin2発現をRT-PCRおよび免疫組織染色にて解析すると、CTNNB1異常よりはRTA, TERTの活性化に有意に相関していた。これらの結果を病理分類、臨床的なリスク分類と比較すると、病理では胎芽型、リスクでは転移例でRTA, TERTの活性化が有意に高かった。また、マイクロアレイで解析済み網羅的遺伝子変異と遺伝子発現のデータとをRTA, TERTの活性化およびCTNNB1異常との関連からも、Wntシグナル下流遺伝子の活性化がみられ、特にMYC, MDR-1, CyclinD1, Survivinが抽出された。小児肝細胞癌ではこれらとは別のシグナルの関与が示唆された。選別された分子標的に対し、そのsiRNAを肝芽腫細胞株(HepG2、並びにJHB1,2,3)に導入すると増殖が抑制され、有用な分子標的候補で、今後の肝芽腫のオーダーメイド療法に有用と考えられた。
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