研究実績の概要 |
1,塩化ベンザルコニウムを用いた安定したヒルシュスプルング病モデルマウスの作成に成功(野生型ICR、C57BL/6Jを使用)し、神経堤細胞由来細胞を蛍光標識したマウスで作成した同モデルにおける無神経節腸管の病理組織の評価、腸管内残便量と体重増加率を用いた機能評価を行った。これらの結果で消化管機能障害を呈することを示した。この成果は国際学会Neuro2013、国内学会第19回大腸肛門機能障害研究会で発表し、後者の研究会で研究奨励賞を受賞した。
2,マウス腸管由来神経堤幹細胞を薬剤性ヒルシュスプルング病モデルマウスへ移植した。8週間に渡って移植細胞が生体内で生着していることを発光を利用したIn Vivo Imaging Systemによる経時的観察で証明した。移植細胞は腸管内で神経、グリアのマーカー陽性を発現する細胞に分化していた。腸管内残便量と体重増加率による機能評価で消化管機能の改善傾向も示すことができた。同結果は第26回小腸移植研究会で発表し、研究奨励賞を受賞した。さらに、この成果は第115回日本外科学会学術集会でのパネルディスカッション、国際学会 ENS meeting 2015でも発表を行う。
3,ヒト腸管由来神経堤幹細胞の分離同定とその解析は、24年度に5件のヒト検体を用いた実験を施行し、うち2件で神経堤幹細胞のsphere作成ができた。それらは神経、グリア、平滑筋の3系統への分化を認めた。しかし、その後、成功例の条件が特定できず、神経堤細胞増殖寄与因子GDNF,Wnt3aなど添加も試みたが明らかな効果を認めなかった。継代は非常に困難で細胞数減少するのみで、2回目以降の継代はできなかった。25年度は研究に用いることができた検体は2件のみで、いずれも神経堤細胞sphereが形成されなかった。ヒト検体を用いた分離の機会は限られているため、マウスを用いた細胞移植治療の研究に重点を置いた研究計画に変更した。
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