遂行した実験: 1)脱細胞化血管移植片の作製及び最適化:SDラットの大腿動脈を20㎜の長さで採取し、室温でPBSで15分洗浄、1%SDSで24時間洗浄、純水で30分洗浄、1% Triton-X100で60分洗浄、抗生剤入りPBSで6日間洗浄、純水で1時間洗浄後、凍結乾燥する。脱細胞効率を上げるため、二種類の方法を試す:a)SDS洗浄とTriton-X100洗浄後超音波洗浄を20分間加える。b)左心室に針を挿入、右心房を開き、左心室から試薬を導入、全身潅流を行う。内膜抗凝固措置として、MPC塗布を行う。2)脱細胞化血管組織片の分子構造評価:作製された試料を臨界点乾燥とイオンコーティング処理を施し、走査電子顕微鏡(SEM)で立体構造を観察する。3)血管移植及び機能評価:Wistarラットの大腿動脈に10㎜の欠損を作製し、異体脱細胞化血管移植片を10-0ナイロン糸で端端吻合する(各群N=5)。術後4週目にサンプルを採取し、血管の開存を確認する。4)組織学的評価:移植部位を採取し、ホルマリン固定、パラフィン包埋の後に縦方向に薄切切片を切り出し、免疫蛍光染色で膠原線維、弾性線維、基底膜の変化と、血管内皮細胞、平滑筋細胞、線維芽細胞の形態を観察する。 結果:超音波処理による脱細胞効率の上昇を確認した。全身潅流は腹腔内臓器には有効だが、下肢の動脈には無効だった。術後4週でラット大腿動脈に移植されたサンプルが栓塞した。MPC塗布群は血管自身が吸収された。 結論:SDSと超音波洗浄は有効な小動脈脱細胞処理法だと確認できた。径0.8~1㎜の血管では脱細胞血管移植は開存しない。MPC塗布は組織吸収反応を惹起するため、脱細胞血管に不適切だと考える。
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