研究課題/領域番号 |
24791906
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
渡部 聡子 岡山大学, 大学病院, 医員 (20379803)
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キーワード | 人工骨 / 人工ECM / β-TCP / BMP-2 / ティシュエンジニアリング |
研究概要 |
目的:硬組織分化因子BMP-2を用いて、BMPがハニカムTCPに及ぼす影響について検討する。具体的には各種濃度のBMP-2を、各種孔径を有するハニカムTCPにそれぞれ含浸させ、実験動物に移植してその活性の違いを組織学的に観察し、ハニカム構造の違いにより骨組織の分化誘導形態の違いを検討するとともに、どのような構造であれば最も効率よく骨組織を誘導できるかを調査した。実施結果:各種濃度のBMP-2を、各孔径を有するハニカムTCPにそれぞれ含浸させ、実験動物に移植して組織学的に検討を行ったところ、孔径300μmおよび500μmのハニカムTCPではBMP-2の濃度によらず、いずれの場合でも孔内壁に添加するように盛んな骨組織形成が認められたが、その他の孔径のハニカムTCPでは骨組織の形成は殆ど認められなかった。そこで、ラット頬骨弓部に全層骨欠損モデルを作成して、BMP-2を含浸させた孔径300μmのハニカムTCPを骨欠損部に移植したところ、既存骨の骨欠損部周囲には細胞質の豊かな骨芽細胞が多数認められ、著しい新生骨の形成が認められた。しかしTCP周囲には骨組織の形成は認められず、既存骨との骨結合は認められなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度研究では骨組織分化BMP-2 を用いて、ハニカム構造の違いにより骨組織の分化誘導形態に違いがあるかを検討した。各種濃度のBMP-2を、各種孔径を有するハニカムβTCPにそれぞれ含浸させ、実験動物に移植して組織学的に検討したところ、孔径300μmおよび500μmのハニカムTCPではBMP-2の濃度によらず孔内壁に添加するように盛んな骨組織形成が認められた。その他の孔径のハニカムTCPでは骨組織の形成は殆ど認められなかった。従って、このうち最も骨組織形成の旺盛であった孔径300μmのハニカムTCPであれば、比較的大きなものでも中心部まで微小血管進入を可能にし、骨細胞を誘導する足場としての役割を果たす事ができると考えた。そこでラット頬骨弓部に全層骨欠損を作成し、このハニカムTCPを埋入、組織学的評価を行った。ラット頬骨弓部に移植する人工骨の大きさに合わせた完全な全層骨欠損を作成し、孔径300μmのハニカムTCPにBMP-2 80μg/ml含有マトリゲルを充填、骨欠損部に埋入し、骨膜及び筋層を縫合した。埋入後3週目にHE染色標本で観察したところ、既存骨の骨欠損部周囲には細胞質の豊かな骨芽細胞が多数認められ、著しい新生骨の形成が認められた。しかしTCP周囲には骨組織形成は認められず、埋入したTCP周囲には炎症性細胞や破骨細胞と共に未分化間葉系細胞が認められた。骨結合が生じない原因として、咀嚼によるTCPの動揺が影響していると考えられた。そこで同TCP埋入時にワイヤー固定を行い、同様の実験を行なったところ、多少の炎症反応等の改善は認められたものの、既存骨とTCPの直接的な結合は認められなかった。
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今後の研究の推進方策 |
今回の実験ではTCP周囲に炎症性細胞の浸潤が認められたことや、一般的に骨癒合不全の原因として骨の不安定性、動揺性などが要因として挙げられる事から、これら骨形成の妨げになっていると思われる因子を排除するため、移植時に炎症を抑制する薬剤投与や、移植骨の安定性等について検討したうえで、同モデルによる実験を再開することとした。
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次年度の研究費の使用計画 |
今回頬骨弓部骨欠損モデルにおいてハニカムTCPを移植した実験系では、HE染色標本において十分な骨組織形成を認められなかったことから、さらに免疫組織染色による検討を行うに至らなかった。従って、免疫染色で使用する各種硬組織関連抗体の試薬を購入しなかったために、購入資金に余裕が生じた。 先述の計画のとおり、ラットを用いた頬骨体部の骨欠損モデルを作成し、BMP-2及びアセチルサリチル酸含有ハニカムTCPを移植して骨組織形成過程を組織学的に検討する。移植実験に必要なラットの購入と、使用するBMP-2、アセチルサリチル酸および基質であるマトリゲルの購入に使用する。また、実験が成功した場合に免疫組織学的に検討を行うための抗体試薬の購入にも使用する。
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