研究課題/領域番号 |
24791907
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
妹尾 貴矢 岡山大学, 大学病院, 医員 (90509465)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 神経再生 / 自己集合性ペプチド |
研究概要 |
当初計画のとおりラットの坐骨神経を用いて1cm長の神経欠損モデルを作成。神経欠損部の処置が異なる6群に分け、各群の処置後1~8週における運動能力評価および8週時点での組織学的評価を行った。 具体的な6群は、①神経欠損部に何も間置しないnegative control②切断した神経を再移植するpositive contorl、さらに人工神経としてそれぞれ③自己集合性ペプチドゲル④生理食塩水⑤PuraMatrixTM⑥Type 1コラーゲンを内部に充填した1.5cm長の人工神経を用いた群である。人工神経はポリ乳酸を用いて予備実験時より細い形状で作成した。 当初、実験動物として、20週齢のラット(Wistar)12匹(12肢)を用いて行ったところ、②群を除いて、下肢運動機能の各群間に処置後8週までに明らかな運動機能の回復に差異を認めることは出来なかった。 電気生理学的評価においても同様の結果であった。 処置後8週時点で摘出した神経再建部の組織学的評価においては、吻合部周辺での再生軸索の出現が活発であったが、人工神経中央部では再生軸索数は予備実験同様に低下していた。上記の変化は②群と他の群との比較において特に顕著であり、各人工神経群間の差はわずかであったことからやはり構造的問題によるものと推測された。特に再建神経の側方からの栄養供給の面で人工膜は不利と予想されるため、より薄く生理的な生体膜としてラット静脈の使用を検討中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
過去の実験では予備実験の経験から人工神経の構造的問題解決のため、より細いポリ乳酸膜のマイクロチューブを作成して行った。構造の微細化に伴い、手技が煩雑となったことで実験そのものの進行が遅れてしまったと思われる。
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今後の研究の推進方策 |
実験の基本デザインは現状のままとしながら、現在問題となっている人工神経の構造的改善をまず行う。 今後はラット自家静脈を使用予定であるが、例として大腿静脈の使用は下肢全体の循環への影響が無視できず実験の機能評価上も問題となり得るため使用は困難である。浅下腹壁静脈は細く採取が難しいが、同一術野で採取することができ、実験動物の肉体的負担の観点からも適当と考えられるため、この使用を基本とし、縫合手技やゲルの微細間腔構造への注入法など具体的方策を準備する。微細間腔構造への注入手技はリンパ管研究等で培ってきた技術の流用で可能と思われる。 また順調にいけば発展系として、同一個体内で坐骨神経を神経束単位で複数本裂きにして、それぞれ別の充填物を用いた人工神経で再建することも検討する。この方法では運動機能上の比較はできないものの組織学的評価においてhalf side testとなるためより鋭敏に各素材を比較することができると予想される。このため、過去の実験で予想より小さかった素材間の神経回復の差異をより詳細に解析することが可能かと思われる。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究費は人工神経の素材となる自己集合性ペプチドゲルおよび実験動物の購入、超微細手技用の手術器具の調達用に使用する見込みである。
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