研究概要 |
前年度の実験結果を踏まえ、新たにラットを用いた実験を行った。新実験ではより若い8低週齢のラットを用い、人工神経の外皮として人工物ではなく、対側の自家大腿静脈を採取して使用した。人工神経内部充填剤として自己集合性ペプチド2種を用い、Panacea Gel(以下PG)群、PuraMatrix(以下PM)群を設定、Positive control(自家神経、以下PC)群、Negative control(自家静脈+生理食塩水充填、以下NC)群の全4群に分け、術後2,4,6,8週における下肢の運動評価および、組織採取を行い、神経線維の再生状況を組織学的に評価した。 本年度当初は、人工神経外皮としてラット下肢への血流障害の可能性を考慮し、下腹壁静脈を使用したが、坐骨神経との口径差が著しく、吻合面からの神経線維の脱出が許容できず、技術的障害が克服できなかった。そのため対側下肢より大腿静脈を採取することで、十分な口径の静脈を得て実験を継続した。 実験の結果、下肢運動においては全群とも以前の実験よりも運動の改善を認めていたが各群間における明らかな差異を認めることはできなかった。 採取した組織の評価においては、特にNC群とPGおよびPM群の比較では、人工神経内腔が広く保たれており、人工神経中央部まで細胞の流入が活発であった。このことは、より粘性のある自己集合性ペプチドにより人工神経の構造が長期間維持され、且つ細胞増殖に障害を来さないという特性の一端であると考えられた。またPG、PM間の比較では特に差を認めなかったが、中性のPG群と強酸性であるPM群で際を認めない点は逆に注目すべきと考えた。 今後、同一個体内での神経束分けによる複数の人工神経での再建実験等、追試を行った上で、今年度中には学会発表、来年度中の論文掲載を目標としている。
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