tissue engineering chamber内にウサギの伏在動静脈とコラーゲンスポンジを導入し、新生組織弁を作製する方法を用いて、われわれは脂肪由来幹細胞(ASCs)と高濃度酸素の影響を検討した。実験動物にはJapan White系の雄ウサギを用い、実験数はn=7で行った。ウサギ項部脂肪からASCsを抽出し、3継代の培養を経て100万個のASCsを得た。ウサギの浅大腿動静脈のAV bundleをコラーゲンスポンジとともにchamber内に導入し、各条件下で4週間飼育した。Control group :正常酸素下で4週間飼育。Experimental group 1:コラーゲンスポンジに100万個のASCsを播種し、正常酸素下で4週間飼育した。Experimental group 2:酸素濃度60%下で1週間飼育した後、正常酸素下3週間の計4週間飼育を行った。 Experimental group 3:コラーゲンスポンジに100万個のASCsを播種し、酸素濃度60%下で1週間+正常酸素下3週間飼育した。計4週間飼育後にchamberを露出して増殖した組織の組織標本から3mm厚の切片を得て、各切片における10μmの標本組織を作成した。 Experimental group 3: ASCs+酸素濃度60%において32%の新生組織増大効果が認められた。Experimental group 3では血管柄側とchamber側の両側より組織形成が見られたのに対し、その他の群では主に血管柄側から組織が形成されていた。それぞれ単独では効果が認められなかった高濃度酸素とASCsを併用することにより、tissue engineering chamber内の新生組織弁の増大効果とともに、著明な膠原線維の増加が確認された。ASCsを播種した Experimental group 2ではコントロール群と比較して明らかな膠原線維の増加がみとめられたが、新生組織の増大効果は認めなかった。このことから、高濃度酸素下でASCsのパラクライン効果が増強されたと考えられた。
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