形成外科領域において、脂肪移植は一般的な手技であり、悪性腫瘍再建、外傷から美容まで幅広い分野で施行されている。この方法の最大の利点は、手術瘢痕が最小限であり、患者にとって低侵襲であるといえる。また皮下脂肪の不要な部分から採取することで副次的な満足感が得られるのも特徴である。高知大学形成外科においても、乳癌の再建手術術後の修正などに用いられている。しかし、問題点としてその生着率の悪さが挙げられる。脂肪を遊離して、血流の無い状態で移植するため、脂肪融解が徐々に起こり、最終的にはその50%程度が吸収されてしまうのが実情である。そのため、通常脂肪移植は追加で数回行われるため、患者の負担も大きく、また手術回数が増えることによって感染のリスクが高まり、特に乳癌の手術のように、最終的に左右対称の形態を獲得することを目的としている手術においては、感染により形態に変化が生じてしまったり、感染により瘢痕化が起こり、質感が固くなってしまったりすると、治療上致命的となってしまう。そのため形成外科領域を中心に、脂肪をより効率的に移植するためにはどうすればよいか、との報告が数多くある。その中心は脂肪組織由来幹細胞に関する研究であるが、その手技の煩雑さやコスト面から、より簡単で効率の良い脂肪組織移植は無いかと検討し、脂肪移植する際筋膜で被包してから移植してはどうかと考えこの研究を開始した。マウス頭部に鼠蹊部から採取した脂肪塊を大腿筋膜に被包して移植した。時間をおいて移植した脂肪を取り出して顕微鏡にて脂肪細胞を観察した。これに対して筋膜で被包されていない脂肪移植も行い経過をみているが、感染などがたびたび起こり実験は難航している。
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