研究課題/領域番号 |
24791913
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 京都府立医科大学 |
研究代表者 |
素輪 善弘 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (80468264)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 脂肪由来幹細胞 / 末梢神経再生 / 神経堤 / 脂肪分化 / 間葉系幹細胞 |
研究概要 |
脂肪組織由来幹細胞(Adipose-derived stem cells:ADSCs)は均質な細胞ではなく実際には多様な細胞群により構成されると考えられており、個々の細胞の発生学的由来や能力の差異についてもよくわかっていない。研究代表者らは発生学的由来による脂肪組織幹細胞の多様性の解明を行うことで、効率的かつ安全なASCの再生医療応用法の研究を企図した。まず神経堤由来細胞を追跡できるP0-Cre/loxp-GFPマウスを用いて、脂肪組織幹細胞の一部が神経堤由来の細胞集団であり、通常のADSC培養条件で培養できることを明らかにした。これらの含有率は体幹部より頭頸部の皮下脂肪由来のものが約3倍程度高かったが、増殖能力や多くの間葉系幹細胞マーカー発現において大きな差異はなかった。一方でこれらの細胞群(GFP+細胞)はそれ以外の細胞(GFP-細胞)と比較して細胞形態や一部の免疫形質について相違点がみられた。特筆すべきことに、これらの細胞群が高い脂肪分化能を有すると同時に、骨・軟骨に分化しにくい傾向がみられた。また神経やグリア系細胞(シュワン細胞など)に分化しなかった。よってこれらの細胞群は神経堤幹細胞とはまた異なる細胞集団であり、脂肪組織の成長、ターンオーバーに関わっている可能性も考えられた。今後われわれはこの細胞の特性や機能さらに組織内での局在や機能についてもさらに詳細に検討を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ADSCにおける系譜の異なる細胞集団の追跡可能なCre reporterマウスの作製に着手し、Zuk PAらが報告した方法(Tissue Eng 2001)を用いて、ADSCを採取。これらの中で神経堤由来細胞が追跡可能なCre/loxP systemを利用したマウスモデルにおいてADSCの一部に神経堤由来細胞が一定量含まれていることに注目した。これらの細胞は通常のADSC培地で培養可能なことまた従来の報告に従って表面抗原の発現を含めたADSCの形質分析を確認した。次にそれぞれについて分離直後(freshly isolated)と2、4,6継代後のADSCにおけるGFP陽性細胞を確認し、その全体に対する割合を算出した。またこれらを生後1週齢、3週齢、16週齢における採取率の年齢による差異の検討も終えた。次にReporter蛋白を利用したFACSを用いて、ADSCをGFP陽性細胞(神経堤由来細胞)とGFP陰性細胞に分離・回収しそれぞれを培養した。ADSCについて、それぞれ間葉系幹細胞マーカー(CD29、CD44,CD90,Sca-1)・造血幹細胞マーカー(CD45)・血管内皮細胞マーカー(CD31) の発現をフローサイトメトリー・免疫染色にて解析、分化能については、まず間葉系由来幹細胞に特徴的な3系統分化について検討した。次に、増殖能については、長期的に継代培養が可かと細胞増殖曲線を作成し、分化能と同様にGFP陽性細胞と陰性細胞を比較検討をおこなった。また、マウス由来細胞を参考にこれらの細胞表面分子発現の網羅的な解析を行うことで、選択的分離に使用可能な各由来細胞特異的なマーカーの探索を終えた。
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今後の研究の推進方策 |
まず細胞の特性や機能(特に分化能について)の詳細な検討を行う。具体的には、神経堤由来ADSCとその他のADSCの脂肪分化能を定性的にはoil red O染色、定量的にはperilipin染色陽性率の比較検討を行う。またpreadipocyte markerやmature adipocyte markerの発現比較を行う。骨・軟骨分化についても同様の方法で定性・定量比較を行う予定である。 生体内局在と脂肪組織形成への寄与について検討を行う。それぞれの由来追跡モデルマウスの鼠径部及び頭部皮下脂肪組織より標本を摘出し、GFP陽性細胞の局在、形態、免疫形質について組織学的に検討する。また、これらのモデルマウスの成長過程による変化についても検討する。 さらにそれぞれの細胞集団のin vivoにおける機能解析をしていく予定である。われわれが注目している神経堤由来のADSC細胞群が医療再生応用の観点から実際生体内でどのような特性や機能を保持しているかについて、従来より一般に利用され効果が広く確認されている遊離脂肪移植モデルを用いてin vivoにおける動態及び機能評価を行う。それぞれ由来の異なるGFP陽性細胞群を注入付加した遊離鼠径皮下脂肪組織を頭部皮下に移植する。それぞれの移植付加細胞群の術後動態を組織学的に追跡するとともに、生着率・脂肪組織新生については組織重量を指標に、脂肪分化・血管新生については免疫組織学的解析を用いて非分離ADSC及びPBSを注入したものを対照群とし比較する。また神経堤由来ADSCがより効率的にグリア系細胞あるいはニューロンに分化できた場合はマウス坐骨神経欠損モデルに移植を行い、生体における移植後の動態及び末梢神経再生への寄与を検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
細胞の特性や機能(特に分化能について)の詳細な検討 神経堤由来のADSCについて、分化能力を詳細に検討する。具体的には、神経堤由来ADSCとその他のADSCの脂肪分化能を定性的にはoil red O染色、定量的にはperilipin染色陽性率の比較検討を行う。またpreadipocyte markerやmature adipocyte markerの遺伝子・蛋白レベルでの発現比較を行う。骨・軟骨分化についても同様の方法で定性・定量比較を行う予定である。 生体内局在と脂肪組織形成への寄与 それぞれの由来追跡モデルマウスの鼠径部及び頭部皮下脂肪組織より標本を摘出し、GFP陽性細胞の局在、形態、免疫形質について組織学的に検討する。また、これらのモデルマウスの成長過程による変化についても検討する。
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