研究課題/領域番号 |
24791920
|
研究種目 |
若手研究(B)
|
研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
宮本 純平 広島大学, 病院(医), 病院助教 (90365312)
|
研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
|
キーワード | ケロイド / 肥厚性瘢痕 / 有限要素法 / コンピュータ・シミュレーション / テーピング |
研究概要 |
術後の肥厚性瘢痕やケロイドは、患者と外科医双方にとって深刻な合併症である。創にかかる緊張の程度は、ケロイド・肥厚性瘢痕発生の最も重要な因子として知られている。このため、現在、ケロイドや肥厚性瘢痕の予防・治療として最も一般的な方法は、創の緊張を軽減する方法であるが、創とその周囲に及ぶ生体力学的現象が十分に解明されていないため、効果は限定的である。より効果的なケロイド・肥厚性瘢痕の予防法の開発のため、人間の体の一部を完全に再現した有限要素法モデルの作製が必要不可欠であると考えられる。今回、胸部モデルの作製を目指して、基礎データの収集を行った。当科で撮影した男女の胸部 Multidetector-row computed tomography(MDCT)画像から、3次元CADモデルを作製した。DICOMデータ処理ソフト Intage Volume Editor(サイバーネットシステム社製)、 ZedView version6.0(レキシー社製)などを用いて、CT値を基に、皮膚・皮下組織・乳腺・筋層・肋軟骨・肋骨の形状データを抽出し、 Stereolithography(STL)データを得た。得られた形状データには、アーチファクトによるノイズや欠損が含まれるため、リバース・エンジニアリングソフト RapidformXOS2(INUS Technology社製)などにより修復した。更に、物性値の収集を行った。新鮮屍体検体の人体胸部から得られた検体を用いて、引っ張り試験を行った。瘢痕については、瘢痕形成術時に破棄される検体を用いた。得られた応力変位曲線から、それぞれの組織に固有の物性値を計算した。骨に関しては、CT値から骨密度・物性値を計算した。今後、これらのデータを、ANSYS12.0に代入することで、創に働く緊張と創傷治癒の関係を明らかにしていく。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の研究計画では、胸部モデルの作製と物性値の収集を予定していた。当科で撮影した男女の胸部CT画像から、3次元CADモデルを作製した。またCT値を基に、皮膚・皮下組織・乳腺・筋層・肋軟骨・肋骨の形状データを抽出し、STLデータを得た。得られた形状データには、アーチファクトによるノイズや欠損が含まれるため、リバース・エンジニアリングソフトなどで修復すた。 更に人体胸部の新鮮屍体検体を用いて、引っ張り試験を行った。瘢痕については、瘢痕形成術時に破棄される検体を用いる。得られた応力変位曲線から、それぞれの組織に固有の物性値を計算した。骨に関しては、CT値から骨密度・物性値を計算した。これらのデータを、先のモデルに代入することで、CADデータを作製した。以上より、本年度予定していた実験は全て終了しており、年度計画通りに進んでいると判断する。
|
今後の研究の推進方策 |
本年度の研究により、今後シミュレーションを進めていく基礎データが得られたため、今後有限要素法を用いた構造解析を進めていく予定である。次年度は、構造解析の実行と結果の検証を予定している。FreeForm Modeling Plus 11.0(SensAble Technologies社製 )を用いて、モデルの前胸部に、様々な形状の瘢痕を作製する。構造解析用メッシュ作製ソフト ICEM CFD(ANSYS社製)を用いて、モデルを要素分割する。構造解析ソフト ANSYS13.1(ANSYS社製)を用いて、境界条件を設定し、呼吸運動や重力を近似した負荷を与えることで、瘢痕とその周辺に発生する応力を解析する。構造解析により求められた結果を、実際のケロイド・肥厚性瘢痕の臨床データと比較検討することで、前胸部ケロイドに特異的な発生・浸潤パターンを生体力学的側面から明らかにする。検証には、非接触3次元デジタイザ Vivid 910(Konica Minolta)によりデータベース化しているデータを用いる。
|
次年度の研究費の使用計画 |
次年度では、データ保管用のハードディスク、USB、SDカード、実験器具などの消耗品、解析補助用のパソコンなどを購入予定である。大型物品の購入予定はない。他に国内、国際学会に出席予定である。
|