研究課題/領域番号 |
24791925
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研究機関 | 聖マリアンナ医科大学 |
研究代表者 |
太田 有紀 聖マリアンナ医科大学, 医学部, 助教 (60387066)
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キーワード | 脂肪組織 / 脊髄損傷 / 細胞治療 |
研究概要 |
外傷性脊髄損傷モデルラットへの脂肪組織由来細胞(adipose-derived stem/stromal cells; ASCs)移植は、障害を受けた後肢運動機能の回復を促進させ、脊髄損傷部の空洞化を抑制する効果、すなわち、治療効果があることをこれまでに明らかにしている。また、その作用機序として好中球走化性因子cytokine-induced neutrophil chemoattaractant-1(CINC-1)が関与する可能性を見出し、CINC-1の投与もASCsの移植と同様に後肢運動機能の回復を促進させることを明らかにした。 本研究では、その治療効果のメカニズムの解明を目的として、ASCsの移植後にどのようなシグナル経路が活性化されるか検討した。ラットASCs、あるいはCINC-1投与後の脊髄を摘出し、シグナル分子の発現およびリン酸化についてWestern blot法を用いて検討した。その結果、ASCs移植後の脊髄では、細胞生存シグナルに関与するMAPKのリン酸化の亢進が認められた。CINC-1投与後の脊髄においても同様であったことから、ASCsの移植による治療メカニズムの一つとして、CINC-1の上昇を介し、MAPKを活性化させることが示唆された。 今後、ASCsの移植に関して、並行して凍結組織からのASCsの単離について詳細な検討、さらに、ヒトASCsを用いた検討が必要と考える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の大きな目的は、①ASCs静脈投与後のCINC-1の役割、②凍結脂肪組織からのASCsの単離・培養について明らかにすることの二点である。これまで、モデルラットへのCINC-1投与の効果およびその作用点、また、ラット凍結脂肪組織からのASCsの単離・培養が可能であったという結果が得られている。 また、ヒトASCsでの検討は、これまで聖マリアンナ医科大学病院形成外科の協力のもと得られたヒト脂肪組織を用いてきた。しかしながら、研究の遂行上、ヒト脂肪組織の入手が律速になることから、乳腺内分泌外科とも連携し、乳房全摘出手術時に余剰となった皮下脂肪組織を文書同意の得られた患者から提供していただけることとなった。現在、本学生命倫理委員会の承認を受け、臨床研究を実施中である。 これらの成果より、本研究課題は概ね順調に進展しているものと評価した。
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今後の研究の推進方策 |
ラットASCsに加えてヒトASCsでの検討を計画しており、遂行上はヒト脂肪組織の入手が律速となる。形成外科のみならず乳腺内分泌外科の協力も得られたことから、症例を集め、ヒト脂肪組織からのASCsの単離と培養技術の確立を目指す。また、凍結脂肪組織から単離・培養したASCsの細胞特性、移植細胞とをして有用であるか等、ラットのみならずヒト脂肪組織についても検討する予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
最終年度である平成25年度に、当該研究の成果として学術雑誌での発表を考えており、論文投稿・印刷費用を計上していた。しかしながら、現時点において受理されていないため未使用額が生じた。 未使用額は、追加実験を求められた際の消耗品費、また論文が受理された際の投稿・印刷費に充てる予定である。
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