研究課題
若手研究(B)
平成24年度は、野生型マウス(Wildマウス)とprostamide/PGF synthase(PM/PGFS)欠損マウス(KOマウス)を用いて創傷治癒モデルを作製し、これらの解析を行った。創傷治癒におけるPM/PGFSの発現変化および発現細胞を調べるため、皮膚切除による創傷モデルをWildマウスで作製し、創傷後3、7、11、14日後に免疫組織学的解析を行った。その結果、PM/PGFSは創傷後3~7日後において、創傷部の肉芽組織内で顕著な発現増加を示した。PM/PGFSはCD68陽性マクロファージで主に発現していたほか、線維芽細胞系と思われるCD68陰性の紡錘形細胞の一部にも発現していた。これらのことから、PM/PGFSが創傷3~7日後での肉芽組織内の創傷治癒に関与することが示唆された。次に、WildマウスとKOマウスにおける創傷治癒の過程を組織学的に比較検討した。皮膚切除モデルにおいて、KOマウスの創傷治癒はWildマウスと比べて顕著な差を示さなかった。齧歯類において、皮膚切除による創傷治癒モデルでは肉芽組織による創傷治癒の変化を見いだしにくいため、肉芽組織におけるPM/PGFSを研究対象とする本実験には適さないと思われた。そこでシリコンリングを用いたSplintedモデルを作製し、肉芽組織による創傷治癒をより観察しやすいモデルでの解析を開始した。また創傷治癒に関係するPG類の一斉定量を行うためのLC-MS/MSシステムを立ち上げ、動物組織からPGF2alpha、PGD2、PGE2、アラキドン酸、Prostamide F2alphaを定量する系を確立できた。
3: やや遅れている
平成24年度は創傷治癒におけるPM/PGFS発現細胞の同定、および創傷治癒への関与の可能性を示唆できる結果を得ることが出来た。また本研究に必要な免疫組織化学的および生化学的手法の実験条件が確立できた。一方、当初の計画であったSplintedモデルによるWildマウスとKOマウスとの比較解析が遅れている。比較解析が遅れた理由として、Splintedモデル作成の条件検討に時間を要したことが挙げられる。特に、皮膚に装着したシリコンリングが実験途中で頻繁に脱落してしまっていたため、リングの脱落を防ぐ条件の探索に時間を要した。この問題は既に解決しており、Splintedモデルの作成および解析は順調に進行している。
平成24年度に続き、WildマウスとKOマウスを用いた、Splintedモデルを作製し、解析する。創傷治癒過程の評価を組織形態学的手法により行うほか、PG類とそれらの関連因子(各合成酵素と受容体)、I 型およびIII 型コラーゲン、Matrix metalloproteinase、増殖因子、サイトカインを対象とし、これら因子の発現変化を生化学的、免疫組織化学により解析する。特にPG類ではLC-MS/MSによる一斉定量解析を行い、WildとKOマウスとの比較を行っていく。これら解析により、PM/PGFSが創傷治癒に果たす役割、特に線維芽細胞から筋線維芽細胞への分化と機能発現に着目して追求していきたい。また動物モデルによる解析結果が得られてきた後には、WildマウスとKOマウスを用いた初代培養に基づく線維芽細胞保持コラーゲン格子モデルをin vitroモデルとして作製を開始していきたい。
次年度は当初の計画通り、消耗品費、旅費、人件費・謝金、その他の項目に研究費を使用していく。特に消耗品費については、以下のように使用を計画している。実験動物用資材・試薬\150,000、培地・培地用試薬\290,000、分子生物学・生化学用試薬\300,000、薬理学的試薬\200,000、組織細胞化学用試薬\210,000、質量分析用試薬\180,000、プラスチック器具\220,000。また、今年度に残った差引額\12,486は実験動物用資材・試薬費として次年度に充てる。
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