クラッシュ症候群は地震などの災害時に多数発生し、重篤な臨床経過をとるが、その病態は十分解明されておらず、治療法も確立されていない。 本研究の目的はクラッシュ症候群の病態に活性酸素種の産生が関与していることをex vivo imaging を用いて可視化するとともに、抗酸化剤ETS-GSの効果を検討することである。 ラットクラッシュ症候群モデルを用いて、7日間生存率、クラッシュ損傷後6・20時間の血清および20時間後の形態学変化、ex vivo imaging の検討を行った。 その結果、7日間生存率、急性期の活性酸素マーカー(SOD、MDA)、炎症性サイトカイン(IL-6)、alarmin(HMGB1)がクラッシュ損傷を受けることにより有意に増悪し、ETS-GSを投与するといずれも有意に改善することが明らかとなった。組織学的検討ではETS-GS投与により急性肺障害が著明に改善することが明らかとなった。ex vivo imaging を用いた検討では、筋組織は直接損傷を受けることにより有意に活性酸素種の産生が増加し、ETS―GSを投与すると活性酸素種の産生が抑制されることが明らかとなった。直接損傷を受けていない肺でも、クラッシュ損傷により有意に活性酸素種の産生が生じることが明らかとなった。注目すべきは抗酸化剤ETS-GSを投与することにより活性酸素種の産生はクラッシュ損傷を受けていない群と同程度であることが観察された。この結果から、クラッシュ症候群において活性酸素種が遠隔臓器障害に関与していることが示唆された。 本研究結果からクラッシュ症候群に対する治療として、抗酸化療法の有効性が示唆された。またex vivo imaging を用いることにより、各臓器における活性酸素種の産生が可視化できたことは虚血再灌流障害を主病態とする他の疾患の病態解明にも応用可能であると考えられる。
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