急性肺傷害は、時に予後不良な致死性病態に陥る。その機序には炎症反応の消退が何らかの原因により失敗し、炎症反応が慢性化して急性呼吸窮迫症候群 (ARDS)のようになってしまうことが関与する可能性が示唆されている。アラキドン酸やドコサヘキサエン酸(DHA)、エイコサペンタエン酸(EPA)などの多価不飽和脂肪酸由来のリポキシン、レゾルビンなどの脂質活性分子が炎症消退に大きな役割を持つことが発見された。今回、急性肺傷害患者の肺上皮被覆液を気管支マイクロサンプリング法(BMS法)で採取し、含まれる炎症消退脂質分子を液体クロマトグラフィー/エレクトロスプレーイオン化質量分析法LC-ESI-MS(n)で解析し、これらの脂質分子が急性肺傷害の病態形成にどのように関わるか、研究を進めた。その結果、侵襲度が低い気管支鏡下マイクロサンプリングBMS法を用いて、人工呼吸下にある患者を対象に肺上皮被覆液ELFを引き続き採取し、市販のレゾルビン等を利用して、LC-ESI-MS(n)分析できるように繰り返し行ない調整することで、BMS法で採取された微量なサンプル中の炎症消退に関わる脂質分析を行うことができることが確認された。今後、疾患ベースの分析に応用していく道が開けるものと考えられた。
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