研究概要 |
人工呼吸器関連肺炎(Ventilator-associated pneumonia, VAP)は集中治療できわめて頻度の高い感染性疾患であり、人工呼吸管理開始48時間以降での発症率は9~24%に認められている。緑濃菌はVAPの高頻度起炎菌として同定されているが、近年高度耐性化して集中治療室で致死的な集団院内感染も度々報告されている。最近の知見として、1)緑濃菌性のVAPが重症化する原因として緑濃菌I型分泌毒素であるExoS, ExoT, ExoU, ExoYなどが直接肺上皮細胞に転移して急性肺障害をもたらすこと2)肺障害の重症度化と緑濃菌のI型分泌毒素遺伝子型との間に相関があることが示唆されている。今回、緑濃菌のIII型分泌毒素タンパク(ExoS, ExoT, ExoU, ExoY)の表現型と遺伝子型を同定するために、遺伝子組換えタンパク(reExoS, reExoT, reExoU, reExoY)を生成しそれぞれのタンパクに知する特異抗体を作成、また遺伝子型exoS、exoT、exoU、exoYについての遺伝子型を診断するために、Multiplexal Polymerase-chain reaction (PCR)を用いて高速診断できる技術を確立した。本研究により今後、これらの表現型、遺伝子型の診断技術を臨床患者から分離される緑濃菌の毒性同定に利用し、薬剤耐性及び患者の病態、特に重症肺炎、敗血症との関わりについての疫学調査を実施できる体制が構築できた。
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