研究概要 |
平成25年度は非定型抗精神病薬であるリスペリドンがコカインによる脳内細胞間隙のモノアミン濃度上昇を抑制するか検討した。実験には200~250gのWiater系雄性ラットを用い、測定場所は体温中枢である視床下部前野とした。直管型透析プローブを、Paxion&Watoson(1986)のアトラスに基づいてラットの視床下部(A:-1.1, V:-9.2, L:-0.9)に埋め込み、24-48時間後に実験を開始した。リンガー液 (1ul/min)でプローブを還流し30分毎に、透析液を回収し、直接透析液をエイコム社製の電気化学検出器付高速液体クロマトグラフィー(HPLC)に打ち込み、モノアミンであるDA、NA, 5-HT濃度を測定した。 モノアミンの濃度が安定したところを前値とし、コカイン10mg/kgをラットに腹腔内投与したところ、DA、NA, 5-HT濃度はそれぞれ前値の約25倍、17倍、6倍まで上昇し,コカインはDAだけでなくNAや5-HT濃度も上昇させることが明らかになった。リスペリドン0.5mg/kgをコカイン投与15分前に腹腔内投与したところDA、NA, 5-HT濃度はそれぞれ前値の約15倍、12倍、6倍でありDA濃度上昇は有意に抑制されたがNA,5-HT濃度上昇は抑制されなかった。 この結果からリスペリドンはコカインによる細胞間隙DA濃度上昇を抑制することが明らかにされ、リスペリドンのコカインによる高体温抑制効果の一翼を担っていると推測された。またコカインによる各種作用は主にDA濃度上昇によるものと考えられており、リスペリドンは高体温のみならずコカインの様々な有害作用を抑制する可能性が示唆された。
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