研究概要 |
重症患者は、感染症が契機となって多臓器不全で死亡することが多い。我々が開発したプロテインアレイ法による白血球表面抗原の網羅的解析システム(Immunophenotyping: IP)は、外傷・熱傷患者の免疫能の評価に有用であることを前課題(2009~2010 年度文部科学研究費:若手研究 B,「外傷・熱傷患者でのプロテインアレイを用いた白血球表面抗原の解析と感染症の予知」)で報告した。本課題では、救急外来に搬送される外傷・熱傷患者に加えて、重症非外傷患者に対するIP解析が、感染症と臓器不全発症の予測や早期の治療的介入による救命率の向上に関して、有用か否かを前向きに評価することを目的とした。前課題で確立した解析法を本課題においても同様に施行した。 平成24年度は、当科で集中治療を行った患者のうち、本法の解析に関する同意が得られた重度外傷・熱傷患者6人から得られた計14回のデータを解析した。CD4/8/11c/16b/25/36/66b/68/123/127/161, TLR-2/4, CCR-2/4/5, CXCR-3, CRTh2の全18種類のphenotype抗体に接着した白血球数を評価した。全18種類の白血球phenotypeは、健常成人と同様に外傷・熱傷患者においても、迅速・簡便に解析可能であった。感染、臓器障害発症後には抑制性T細胞(CD127,CD25)が減少し、ヘルパーT1細胞(CCR-5,CXCR-3)、単球・マクロファージ・樹状細胞(CCR-2,CD11c)の分画が増加する傾向を認めた。ヘルパーT2細胞(CCR-4,CRTh2)に関しては有意な変化を認めなかった。この結果に基づき、T細胞および単球、樹状細胞分画を中心にさらなる網羅的IP解析の集積を行うことで、感染症を契機とした多臓器不全の予知にも有用となる可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究ではプロテインアレイ基材を以下の2つの共同研究機関(米国)から無償で供与を受けている。プロテインアレイ基材の追加発注を適宜行っているが、本年度は米国の気候条件が基材の作成において不適切な期間があり、基材の提供が一時中断したことで、データの収集を行えない期間が生じた。 i) Harvard medial school, Massachusetts general hospital, Dept of surgery, Mehmet Toner Ph.D., Ronald Tompkins M.D. ii) University of California Davis, Biomedical engineering, Alexander Revin Ph.D.
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