研究概要 |
重症患者は、感染症が契機となって多臓器不全で死亡することが多い。我々が開発したプロテインアレイ法による白血球表面抗原の網羅的解析システム(Immunophenotyping: IP)は、外傷・熱傷患者の免疫能の評価に有用であることを前課題(2009~2010 年度文部科学研究費:若手研究 B,「外傷・熱傷患者でのプロテインアレイを用いた白血球表面抗原の解析と感染症の予知」)で報告した。本課題では、救急外来に搬送される外傷・熱傷患者に加えて、重症非外傷患者に対するIP解析が、感染症と臓器不全発症の予測や早期の治療的介入による救命率の向上に関して、有用か否かを前向きに評価することを目的とした。前課題で確立した解析法を本課題においても同様に施行した。 平成24年度に解析した重度外傷・熱傷患者人から得られた計14回分のデータ解析結果に基づき、平成25年度は当科に救急搬送された非外傷患者を含む重症患者(ICU入室患者)10人(男性5人,平均年齢 49 ± 16,敗血症性ショック 5例,広範囲熱傷 1例,急性肝不全 1例,多発外傷 1例,健常成人 2例)から得られた計20回のデータ(敗血症性ショック 10回,広範囲熱傷 3回,急性肝不全 2回,多発外傷 1回,健常成人 4回)を解析し,全15種類のphenotype抗体(CD 4 / 8 / 11c / 16b / 25 / 36 / 66b / 68 / 123 / 127, CCR- 4 / 5, CXCR- 3, CRTh2 )に接着した白血球数をIP解析し,SOFA Score (Sequential Organ Failure Score)の関係を評価した.臓器障害を発症するとCD4およびCD36は有意に低下し、CD16b, とCD66bは増加した。またCD4, CD36はSOFA scoreの増加に伴って直線的に低下し、重症度と負の相関を示すことが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
非外傷患者を含む重症患者においても白血球表面抗原の網羅的解析システム(IP)は迅速・簡便に行うことが可能であった。また、臓器障害発症前後に網羅的解析を行うことで、臓器障害発症後にCD4, CD36, CD16b, CD66bが有意に変化することが明らかとなった。冬季に敗血症性ショック例のデータ集積を行うことができ、非外傷の重症患者での検討が可能となった。
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