過大侵襲下の急性呼吸窮迫症候群(以下ARDS)は、肺毛細血管透過性亢進、両側肺水腫、重度の低酸素症を特徴とする致死率の高い急性病態である。ARDSでは様々な炎症性メディエーターが病態形成に関与するが、中でもヒスタミンは肺毛細血管の拡張と血管透過性の亢進作用により肺水腫の形成に直接的な役割を演じるとされる。しかし、ARDSにおける肺毛細血管の透過性亢進をヒスタミンおよび受容体発現の視点で検討した研究はかつて無い。本研究の目的は、侵襲度を詳細に調整出来るヒト肺毛細血管内皮細胞エンドトキシン血症モデルで、肺毛細血管内皮細胞のヒスタミン受容体発現と血管透過性亢進の関連を検討することでヒスタミンシグナルの役割を解明し、さらにその受容体発現を抑制することでARDSの新たな治療戦略を提示しようとするものである。 平成26年度は、微小血管内皮細胞培地キット-2(5%-FBS; EGMTM-2-MV-BulletKitTM)を用いて正常肺微小血管内皮細胞(HMVED-L)を播種した。培養した正常肺微小血管内皮細胞(HMVED-L)を標準モデルとした。これを基にLPS添加モデル、siRNA組み込みモデル、siRNA組み込みLPS添加モデルを作成した。 全てのモデルにおいて、ヒスタミン受容体H1R/H2Rの発現はmRNAをリアルタイムPCR法、Western blotなどにて、血管透過性はtranswellを用いた蛍光測定法にて解析検討した。
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