研究課題/領域番号 |
24791963
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
樋山 伸二 広島大学, 医歯薬保健学研究院(歯), 助教 (60314754)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 口腔解剖学 / 骨代謝 / エストロゲン / 破骨細胞 / エストロゲン応答遺伝子 |
研究概要 |
骨代謝、特に破骨細胞の機能およびアポトーシスにおけるエストロゲンの役割とその応答遺伝子の同定および解析を行なうため、エストロゲン(E2)単回投与した雄ウズラの骨髄骨形成モデルを用いて、以下の実験を行なった。 1.骨髄骨の破骨細胞におけるエストロゲン応答遺伝子の同定を行うために、E2投与3日後の雄ウズラの骨髄細胞を採取し、破骨細胞へ分化誘導のためRANKL/M-CSFを加え、培養を行なった。同時に17β-エストラジオール(17β-E)を添加した。この破骨細胞形成モデルから、E2投与3日後の骨髄細胞から形成された破骨細胞は、17β-Eによってアポトーシスは起こさないが、骨吸収が抑制されるという結果を得ている。それゆえ、これらの破骨細胞からTotal RNAを回収し、DNAマイクロアレイにより解析を行なった。 2.17β-E2無添加の細胞を対照群とし、17β-E2を添加した細胞と比較した結果、発現量が著しく変動した遺伝子が多数見出された。このことから、骨髄骨の破骨細胞はエストロゲンに応答して、さまざまな遺伝子の発現が変動することが明らかになった。 3.次に、変動した遺伝子をカテゴリー別に分類した。これらのカテゴリーから哺乳動物の破骨細胞の分化および機能などに関連する既知の遺伝子を抽出した結果、上昇した遺伝子が10個、下降した遺伝子が3個認められた。このことから、骨髄骨の破骨細胞において、哺乳動物の破骨細胞で発現している遺伝子がエストロゲンにより変動することが示唆された。 以上の結果から、骨髄骨の破骨細胞において、エストロゲン応答遺伝子の存在が示唆された。これらの遺伝子の中に哺乳動物の破骨細胞で発現している遺伝子も含まれること、破骨細胞との関連が不明な未知の遺伝子も多数含まれることから、DNAマイクロアレイによる解析結果は、今後の研究にたいへん有意義な結果をもたらすと考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成24年度における研究計画では、雄ウズラの骨髄細胞を用いて、エストロゲン応答遺伝子の同定および骨髄骨のリモデリングにおける役割を解明することとしていたが、当初の計画の半分ほどの達成となった。その原因の1つとして、昨年は3月上旬から8月上旬の約5ヶ月間、海外出張となっていたため、研究を遂行することが困難であったことがあげられる。しかしながら、研究実績の概要に記載したように、DNAマイクロアレイによる解析が比較的順調に進んだことから、平成25年度における研究計画の遂行は円滑に行なえると予想している。
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今後の研究の推進方策 |
1. 平成24年度で得られた遺伝子群の破骨細胞への役割を解析するため、骨髄骨の破骨細胞において、これらの遺伝子の発現およびエストロゲンによる発現量の変動をリアルタイムRT-PCRにより確認する。変動した遺伝子に対してRNAiによる発現抑制、あるいは翻訳されるタンパク質の中和抗体や阻害剤を用いて発現阻害を行い、破骨細胞の分化、機能およびアポトーシスに及ぼす影響を検討する。 2. 骨髄骨リモデリングにおけるこれらの遺伝子の役割を解明するために、in situ hybridizationや免疫組織学により局在等を検出する。さらに、RNAiによる発現抑制、あるいは翻訳されるタンパク質の発現阻害を行い、破骨細胞への影響だけでなく、骨髄骨リモデリングへの影響を検討する。実験1の結果を踏まえて、骨髄骨におけるエストロゲン応答遺伝子を絞り込む。 3. 実験1、2で得られたエストロゲン応答遺伝子を哺乳動物において同定し、マウス破骨細胞におけるこれらの遺伝子およびタンパク質の発現をRT-PCRやウェスタンブロットなどで確認する。さらに、マウス骨髄細胞あるいは細胞株を用いて発現阻害や発現抑制を行ない、破骨細胞の分化、機能およびアポトーシスに与える影響を検討する。 4. マウスの骨リモデリングにおけるエストロゲン応答遺伝子の役割を解明するため、大腿骨や下顎骨を用いて、in situ hybridizationや免疫組織学により、その局在等を検出する。さらに、RNAiによる発現抑制やンパク質の発現阻害を行い、破骨細胞への影響だけでなく、骨リモデリングへの影響を検討する。また、雌マウスに卵巣摘除術を施し、骨粗鬆症モデルを作製し、同様に、エストロゲン応答遺伝子の役割を解明する。 以上のことから、エストロゲンとエストロゲン応答遺伝子の哺乳動物の破骨細胞の機能制御および骨代謝における役割を解明する。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度の研究費の使用は、以下のような内訳とする予定である。 設備備品費:0千円、消耗品費:700千円、旅費:400千円、人件費・謝金:100千円、その他:200千円 平成24年度に申請していた設備備品「Ultrospec Visible Plate Reader II 96(96ウェルプレート測定用プレートリーダー)」については、当研究期間の中央研究施設に設置してある装置により代用できるため、申請を削除しています。
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