破骨細胞の機能およびアポトーシスにおけるエストロゲンの役割とその応答遺伝子の同定および解析を行なうため、以下の実験を行なった。 1. 24年度に行なったDNAマイクロアレイ解析で得られたエストロゲンにより変動する遺伝子の中から、顕著な変動を示した遺伝子群のうち、2つの遺伝子をsiRNAによる発現抑制を行なった。まず、エストロゲン投与3日後の雄ウズラの骨髄細胞をRANKL/M-SCFを添加し破骨細胞へ分化誘導するとともに、17β-エストラジオールを加え培養した。多核細胞が現れる培養後期に、siRNAを添加した結果、どちらの遺伝子も発現が抑制され、17β-エストラジオールの有無に関わらず、多核細胞の形成が減少した。 2. 生体内における破骨細胞へのエストロゲンの影響を検討するため、エストロゲン投与5日後の雄ウズラ(骨髄骨表面に破骨細胞が存在)にエストロゲンを再投与した。形態学的観察を行なった結果、再投与後、徐々に破骨細胞は扁平化ならびに小さくなった。さらに、骨吸収に関連するV-ATPaseの発現を免疫組織学的に検討した結果、その免疫反応は細胞の形態変化とともに減少した。 3. 実験1と同様に、骨髄細胞から破骨細胞を分化させるとともに、17β-エストラジオールを加えた。培養終了後、V-ATPaseの免疫染色を行なった結果、17β-エストラジオールにより、免疫反応の減少が認められた。 以上の結果から、骨髄骨の破骨細胞には、エストロゲン応答遺伝子と推察される遺伝子、さらにアポトーシスに関係すると考えられる遺伝子が複数存在することが示唆された。また、エストロゲンにより起こる骨吸収能の抑制には、V-ATPaseの発現の減少が関与していることが推察された。これらのエストロゲン応答遺伝子とアポトーシスならびに機能の抑制との関係、さらには哺乳動物の破骨細胞における作用については、今後の検討課題である。
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