研究課題/領域番号 |
24791967
|
研究機関 | 岩手医科大学 |
研究代表者 |
大津 圭史 岩手医科大学, 歯学部, 助教 (60509066)
|
研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
|
キーワード | 幹細胞 / エナメル芽細胞 / 分化 / EMT / 歯 / Rho / ROCK |
研究概要 |
ROCKはRhoシグナル伝達経路において、アクチン細胞骨格を再編成し、細胞運動・接着・細胞質分裂などの調節分子として機能していることが知られているが、われわれはROCKの機能抑制が、エナメル上皮細胞で上皮-間葉転換(EMT)をひき起こす新たな現象を見いだした。そこで本研究は、エナメル上皮幹細胞における、ROCKによるEMTの制御機構とその生物学的意義の解明を行う。具体的には、細胞動態をリアルタイムで観察するイメージングシステムの構築、ROCKドミナントネガティブトランスジェニックマウスを使った機能喪失実験、網羅的遺伝子発現解析、ROCKとSnail-2のシグナル伝達解析などを行うことを計画している。 24年度研究成果 1.タモキシフェン誘導型K14-Cre/ ROCK dominant negative formトランスジェニックマウスの作成と組織解析:タモキシフェン誘導型K14-CreをJackson labより、RhoA, ROCK dominant negative floxedマウスを理研より購入し掛け合わせを行いタモキシフェン投与後の組織解析を行った。その結果胎児、生後のマウス両方で上皮特異的に発現したRhoA, ROCK dominant negativeがエナメル芽細胞、象牙芽細胞の分化が妨げられることがわかった。 2.マウス切歯器官培養でのRho, ROCK機能獲得、喪失実験 :生後1日齢マウスから摘出した下顎切歯apical budを器官培養し、Rhoのactivator, ROCK inhibitorを投与した際の効果を組織学的に解析した。Rho activator投与では、apical bud内に上皮塊様構造物が観察され、細胞がより上皮の特性をより帯びてくることが分かった。逆に、ROCK inhibitor 投与では細胞がより間葉の形態を持つことが分かった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
24年度は研究目的の一つであるタモキシフェン誘導型K14-Cre/ ROCK dominant negative (DN) formトランスジェニックマウスの作成に取り組み、様々な条件検討の後、これに成功した。さらに組織解析の結果、ROCKの活性化がエナメル芽細胞分化に必要であり、逆にエナメル上皮幹細胞はROCKの不活性化によって維持されることが明らかとなった。また、下顎切歯apical budの器官培養を使った実験でも同様の結果が見られたことから、我々がたてた「エナメル上皮幹細胞は、ROCK抑制によって引き起こされるEMTによって未分化性が維持されている」という仮説を証明するデータが徐々に得られてきている。一方、当初予定してた歯胚スライスカルチャーのリアルタイムイメージング技術の構築が計画よりも遅れていることから、早急な実験の実施を取り組みたいと考えている。 以上のことから、現状では目的の達成度についておおむね順調に進展していると判断した。
|
今後の研究の推進方策 |
1、タモキシフェン誘導型K14-Cre/ ROCK dominant negative (DN) formトランスジェニックマウスエナメル芽細胞の分化、EMT、幹細胞関連遺伝子の発現を、免疫染色、in situ hybridizatoinを用いてWild typeマウスと比較する。 2.GFPマウスを用いたapical bud 幹細胞における細胞動態の観察:GFPマウス apical budスライスカルチャーにおける細胞動態をリアルタイムで観察し、幹細胞分裂時における形態変化を観察する。 3.apical budにおけるRhoシグナリング、EMT、幹細胞関連遺伝子の網羅的発現解析:レーザーマイクロダイセクションによってapical bud 細胞と、分化したエナメル芽細胞を切り出し、抽出したcDNAをPCR arrayを用いて網羅的に解析する。解析結果より、分化したエナメル芽細胞にくらべて、apical budで有意に発現が強い遺伝子を抽出し、これらの組織中での発現をin situ hybridizatoinや免疫染色法で確認する。 4.EMT誘導時における4.Snail-2のリン酸化の解析:培養エナメル上皮細胞に対して、ROCK抑制によるEMT誘導時とコントロール時におけるSnail-2のリン酸化状態をWestern blotにて解析する。
|
次年度の研究費の使用計画 |
次年度研究費の多くは実験のために使用する消耗品の購入に充てる。 また5月にフランスで行われる学会Tooth morphogenesis and differentiationに参加するために研究費の一部を旅費として使用する。 結果をまとめ論文にすることができれば、論文校正、投稿料としても使用する。
|