研究課題/領域番号 |
24791974
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研究機関 | 大阪歯科大学 |
研究代表者 |
上田 甲寅 大阪歯科大学, 歯学部, 講師 (50448106)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 栄養 / タンパク / 味覚 / 発生 / 発育 |
研究概要 |
本研究は、三大栄養素のひとつであるタンパクの摂取制限が味覚受容機構の発達・発育にどのような影響を及ぼすのか、以下にしめすタンパク摂取制限モデル動物を作製し、形態的、行動学的に検索することを目的としている。 当該年度において、タンパクの一種であるカゼインの配合を通常(14%)と比較して約1/3(5%)に減らした特別試料を用いて、妊娠3日の時点(母ラット)よりカゼイン摂取制限を開始し、授乳期、断乳後も継続的に新生ラットに対して摂取制限を施した実験動物を作製した。この際、エネルギー量等の影響を排除するためカゼインの代わりにコーンスターチを配合することによって補償した。また、断乳は生後20日齢に母子分離を行った。生後9週齢におけるタンパク摂取制限モデル動物の体重は平均42.0gであり、通常飼育を行ったコントロール群の動物(平均389.5g)と比して著しい発育の遅滞がみとめられた。 これらの動物に対し、生後9週齢より二瓶法を用いて、味覚の嗜好性のテストを行った。味質に関しては 0.1M MSG、0.1M IMP (うま味)、5mM サッカリン、0.5M スクロース、(甘味)、0.1M NaCl(塩味)および0.0003M キニーネ(苦味)の水溶液に対し、対照は蒸留水を用いてそれぞれの飲み量の計測を行い、タンパク摂取制限群とコントロール群の嗜好率を調査した。また、両群より味覚上皮、および中枢の味覚伝導路、味覚中枢のサンプル採取も進行中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
特殊試料の配合およびモデル動物の発育不良により、当初の計画と比べ実験動物の作製に期間がかかり、計画では、生後15日で断乳、30日齢より行動実験を行う予定であったが、断乳は4週齢、行動実験は9週齢に行うこととなった。しかし、現在の時点で“研究実績の概要”にしめしたとおり、行動学的実験による味覚嗜好性の検査はほぼ終了しており、また舌および口蓋の味覚上皮、中枢神経系に存在する味覚受容野のサンプル採取も近日終了予定であるため、初期の計画より日程は遅れているものの内容的には概ね計画どおりに進行していると言える。 また、計測した嗜好性テストの結果は、集計して9月に仙台で行われる味と匂いの学会等で公表する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
タンパク摂取制限群およびコントロール群より採取した有郭乳頭、茸状乳頭、葉状乳頭、軟口蓋の味覚上皮を用いて切片を作製し、H-E 染色を行い、タンパク摂取による味蕾の分布の変化、味蕾の大きさと形態の変化を観察する。また、味刺激の受容・伝達に関与する受容体タンパク質であるGα-gustducin、PLC β2、NCAM 等の抗体を用いて免疫組織化学染色を行い、味蕾内の細胞の性質の変化について検索を行っていく。また、延髄の弧束核、大脳皮質味覚野のサンプルも採取し、味覚受容野の細胞分布の変化についても観察する。 さらに、母体にタンパク摂取制限を加え断乳後に通常飼料にて飼育を行うタンパク摂取回復群の作製を行い、同様に味蕾の大きさ、形態、細胞内の分子動態の変化を検索し、タンパク摂取制限によっておこった変化がタンパクの充分な摂取によって回復するかどうか調査を行う。 加えて、母体には通常飼料を用い断乳後のみタンパク摂取を制限する生後タンパク摂取制限群も作製し、生後のみのタンパク不足による味覚発育の変化状況に関しても検索を加えてゆく。
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次年度の研究費の使用計画 |
形態学的な検索を行うため、サンプル採取用の外科手術器具、切片製作用器具およびガラス器具、染色用の試薬および抗体等の購入が必要となる。 またタンパク摂取回復群および生後タンパク摂取制限群の実験動物を作製するため新たに特別配合飼料および動物の飼育費用等が必要となる。 さらに得られた結果を解析用するためソフトウェアの購入を予定している。 また研究成果発表を行うため、学会参加費および旅費、論文公表時の英文校正、印刷費も必要である。
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