研究課題/領域番号 |
24791975
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研究機関 | 大阪歯科大学 |
研究代表者 |
山根 一芳 大阪歯科大学, 歯学部, 講師 (40388369)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | バイオフィルム / Rothia mucilaginosa / 遺伝子 |
研究概要 |
菌体周囲に網目様の構造物を産生し、バイオフィルムを形成するロシア・ミューシラジノーサ DY-18株のコンピテントセルを調製した。このコンピテントセルを用いてカナマイシン耐性遺伝子をもつトランスポゾンをDY-18株のゲノムにエレクトロポレーション(ECM630 BTX社)し、本年度購入したラボ密度計(DMA4100M)と走査型電子顕微鏡を用いてスクリーニングしたところ、親株と比較して培養菌液の密度、粘度が低下し、菌体周囲の網目様構造物が欠失又は減少した株が3株得られた。 また、我々が既に明らかにしたDY-18株のゲノムの解析をさらに進めたところ、DY-18株のゲノム上には、主要シグマ因子(primary sigma factor)とextracytoplasmic function (ECF) sigma factorが1つずつ計2つのシグマ因子遺伝子しかないことが明らかになった。これはロシア・ミューシラジノーサの標準株であるATCC 25296株がもつ3つのシグマ因子より、さらに1つ少なかった。ECFシグマ因子は、環境ストレス応答や病原因子の産生に重要な役割を果たしていることが分かっている。DY-18株のECFシグマ因子も酸化ストレスへの応答に関与するレドックスモチーフを含むことから、周囲環境の酸化ストレスへの応答機構に関係していることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、カナマイシン耐性遺伝子をもつトランスポゾンを用いることで、ロシア・ミューシラジノーサ DY-18株のバイオフィルム非形成変異株を樹立することが出来た。 また、我々が既に明らかにしているDY-18株のゲノム配列の情報を用いて、細菌の病原性発現に重要なシグマ因子についての知見を得ることが出来た。今回見出したECFシグマが、ロシア・ミューシラジノーサのバイオフィルム形成の調節に直接関与するという結果はこれまでのところ得られていないが、我々は他にもいくつかのストレス応答系が存在することを明らかにしており、ロシア・ミューシラジノーサのバイオフィルム形成調節機構の解明という本研究の目的は概ね予定通り進行していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
GS Junior system (Roche社)を用いて、樹立したロシア・ミューシラジノーサ DY-18株のバイオフィルム非形成変異株の全ゲノム配列を取得し、トランスポゾンの挿入箇所を明らかにする予定である。これによりトランスポゾンの挿入により不活性化した遺伝子のアノテーション情報から、パスウェイを推定することで、菌体外多糖合成経路を明らかにし、バイオフィルム形成に関与する遺伝子を解明することが出来ると考えている。 また、DY-18株を培養して経時的に菌液の粘度を測定し、菌体外多糖の産生量の変化を捉え、バイオフィルム形成状態の菌と浮遊状態の菌を得る。それぞれの菌体から、mRNAを抽出、精製し、逆転写してcDNAを作製する。ノックアウト株の菌体から抽出したmRNAを用いて同様にcDNAを作製する。これらのcDNAに対して、特定した遺伝子のRT-PCRをして遺伝子の発現レベルを比較する予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
変異株ゲノムDNA解析のため、GS Junior systemを用いたパイロシークエンス用試薬などを購入する予定である。また、RNA抽出試薬、RT-PCR用試薬などを購入し、遺伝子の発現を解析する。
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