研究課題/領域番号 |
24791977
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
中村 圭祐 東北大学, 歯学研究科(研究院), 助教 (30431589)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 光線力学療法 / 一重項酸素 / プラーク染色剤 |
研究概要 |
虫歯の原因菌であるStreptococcus mutansの実験的バイオフィルムモデルを確立し、プラーク染色剤に用いられている色素(ローズベンガル、エリスロシン、フロキシン)を用いた光線力学殺菌技術の殺菌効果を検証した。 S. mutansをBHI液体培地に懸濁し、96ウェルマイクロプレートウェル中で培養してバイオフィルムを形成させてものを実験に用いた。色素を10および100 µMでもちい532 nmのレーザー光を出力60 mWで照射した。その結果、これまで浮遊菌モデルで認められてきた殺菌効果よりもバイオフィルムモデルを用いた場合には殺菌効果が著しく減弱することが認められた。これは細菌がバイオフィルムを形成し細胞外マトリックスなどによって菌体を防御していることに起因すると考えられる。 本課題を解決し効率的なバイオフィルム殺菌法を確立するために、色素と過酸化水素の併用を検討した。これは過酸化水素に対する532 nmのレーザー光照射により活性酸素の一種である水酸化ラジカルが生成されるために、光線力学療法で生成される一重項酸素と水酸化ラジカルの併用効果を期待して実施した。しかしながら、過酸化水素の光分解により色素が壊されるため併用効果を得ることができなかった。 次に、バイオフィルムの有機物を除去する目的で色素のpHを上げて同様の試験を行った。その結果、アルカリ条件下でローズベンガルを用いた光線力学療法を行うことで効果的に実験的バイオフィルムを殺菌できることを発見した。 さらに、色素に加えてポリフェノール(没食子酸、カフェインサ酸など)に対して光照射(波長:400 nm)をすることで浮遊菌モデルにおいて効果的な殺菌効果が得られることがわかってきた。今後、色素との併用も視野に入れて研究を行う。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初からある程度予想していた通り、浮遊菌モデルで殺菌効果が得られる光線力学療法であってもバイオフィルムモデルでは殺菌効果が著しく減弱されたため、その解決策を検討するためにある程度時間を費やした。しかしながら、年度内にその解決策を発見できたため当初の計画通り研究を実施することができている。さらに解決策を探る中でポリフェノールを用いた新しい殺菌法の可能性を見出した。
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今後の研究の推進方策 |
色素のpHを調整することで光線力学殺菌療法によってバイオフィルムを効果的に殺菌できることが分かったため、今後は最適なpHやそのメカニズムに関して詳細に研究する必要がある。また、新しく発見したポリフェノール光照射殺菌法との併用効果についても検討する。これらの検討によってバイオフィルムを殺菌するための最適条件を決定し、次にヒト口腔内でで形成されたバイオフィルムを対象とした殺菌試験を行っていく予定である。殺菌試験での評価法としては従来通りの生菌数カウント法に加え、共焦点レーザー顕微鏡を用いてバイオフィルム内での細菌の生死を3次元的に評価し、さらに走査型電子顕微鏡を用いてより細かなバイオフィルムの破壊様相の観察を実施する。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度も引続き殺菌試験を行っていく予定であり、実験に必要な物品、消耗品を研究費で購入する。また、研究成果がある程度出てきているので成果発表も積極的に行うために、論文投稿費用および学会旅費を支出する。さらに、新しい殺菌法としてのポリフェノール光照射法を発見したので、これに関して十分な情報収集が必要となるため同じく調査研究旅費を支出する計画である。
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