研究課題/領域番号 |
24791979
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
林 良憲 九州大学, 歯学研究科(研究院), 助教 (80582717)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 国際情報交換 |
研究概要 |
慢性疼痛におけるミクログリアの役割を明らかにする目的でミクログリアと神経のインターラクションを解析検討した。現段階では未だ、互いにどのようなインターラクションを有するのか不明であるため、正常時の状態での検討を行った。 ミクログリアは夜間に向けて突起を著しく進展させる事が明らかとなった。これらはミクログリア内に存在する時計遺伝子によって制御されていた。更にこれらはミクログリアに存在するP2Y12受容体の発現を司っていた。興味深いことにP2Y12受容体阻害剤の慢性投与によりミクログリアの突起進展の抑制が認められた。この時、ミクログリアとシナプス部位の接触が著名に抑制された。シナプス部位とミクログリアの接触によりシナプス数およびシナプス活動の減弱が生じたのだが、P2Y12受容体阻害剤により、これらの現象が阻害された。ミクログリアの突起がどのようにしてシナプス部位へと到達するか検討したところミクログリア特異分子であるカテプシンSが細胞外マトリクスを分解していた。さらにはこのカテプシンSはP2Y12受容体と同時に時計遺伝子により制御を受け、シナプス強度の調節を担っていた。 以上の結果よりミクログリアに存在する時計遺伝子が神経活動を調節する事が示唆された。慢性疼痛時において、脊髄のみならず大脳皮質においても機能的変化が生じていることが数多く報告されている事から、疼痛時でのミクログリアによる神経回路組み替えが生じている事を示唆する基盤的成果となった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
平成24年度は新規動物の作成ならびにミクログリア機能の異常化の原因解析を計画していたが、ミクログリア機能の解析を行うにあたり正常のミクログリアの理解が必要であった。そのため平成24年度実験計画に先行してミクログリアの新たな機能を捉える事に成功した。当該成果は平成25年度以降に実施するミクログリアとシナプス部位のインターラクションの内容を一部含んでいる。今後 遂行する慢性疼痛時におけるミクログリア機能の解明にあたり、正常のミクログリア機能を解明する事は非常に意義のある事である。更に慢性痛時でのミクログリアの時計遺伝子の関与の可能性も示唆する重要な結果となり、研究課題の解明に大きな前進をもたらしたと考える。そのため、多少計画に前後はあるものの、当初計画していたものに比べ、大いなる成果が得られたものと考える。
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今後の研究の推進方策 |
当該研究成果によりミクログリアの動きがシナプス活動の制御に多大な影響をもたらすことが明らかとなった。更にはこのようなミクログリアの動きが時計遺伝子により制御されている事が明らかとなった。慢性疼痛時にはこのようなミクログリアの動きが破綻する事で神経活動の異常化が生じている可能性が考えられる。そのため、今後は慢性疼痛時におけるミクログリアの動きに着目して検討を進めていく。このような状況下では時計遺伝子の発現リズムが破綻している可能性も考えられる事から、『ミクログリアの時計遺伝子』という概念を当該研究に導入する予定である。当研究の主なターゲットであるBKチャネルは時計遺伝子により制御を受けている事が数多く報告されている。このような事実からも慢性疼痛におけるミクログリア時計遺伝子は重要な意味を有する。時計機能の観点からBKチャネルの発現様式を組織学的あるいは電気生理学的に捉えると共に慢性痛に関与する炎症性サイトカインの産生様式を生化学的に検討していく予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
該当なし
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