研究課題
平成24年度は、破骨細胞の分化において重要な役割を果たしているユビキチンライゲースの同定を行った。破骨細胞分化における遺伝子発現の変化をマイクロアレイ解析を行ったところ、いくつかのユビキチンライゲースの発現の上昇が見られた。それらのユビキチンライゲースを、マクロファージ由来細胞株であるRAW264.7および骨髄細胞に、shRNAを用いてノックダウンを行った結果、SCF型ユビキチンライゲースであるFBW7が破骨細胞の分化を負にレギュレートしている可能性が示唆された(この研究結果を第54回歯科基礎医学会にて発表を行った)。さらにFBW7の新規標的分子としてNFkB2を同定した。NFkB2はこれまでに同じSCF型ユビキチンライゲースであるb-TRCPによるプロセシング制御を受ける事が破骨細胞分化に重要であることを報告してきたが、FBW7はNFkB2そのものの量的制御を行っている事が明らかになった(この研究結果をCell Report誌に論文発表を行った)。またSCF型ユビキチンライゲースであるbTRCPによって制御を受けるNFkB1が、非加重状態の骨代謝の変化に重要な役割を果たしている事が明らかになった(この研究結果をJ Bone Miner Res誌に報告を行った)。現在in VivoにおけるFBW7の破骨細胞における役割を明らかにするために、破骨細胞のマーカー遺伝子であるカテプシンKプロモーター依存的にCreリコンビネースを発現するマウス(CatK-Cre)マウスと、FBW7遺伝子にloxp配列が挿入されたマウス(FBW7-loxp)の交配を行い、破骨細胞特異的にFBW7を欠損するマウス(OC-FBW7KO)の作出を行っている。
2: おおむね順調に進展している
平成24年度の破骨細胞分化において重要なユビキチンライゲースの同定を行った結果、破骨細胞分化にはFBW7が重要な役割を果たしている事を明らかにできた。また、FBW7の新規基質としてNFkB2を同定し論文で発表する事ができた。これらのことから研究はおおむね順調に進展していると考えている。現在、平成24年度の結果をもとにモデルマウスの作出を行っており、平成25年度には解析を行う事が可能な状態になると考えられる事から、平成25年度の準備もおおむね順調に進展していると考えている。
現在、破骨細胞のマーカー遺伝子であるカテプシンプロモーターによりCreリコンビネースを発現するマウス(CatK-Cre)マウスと、FBW7遺伝子にloxp配列が挿入されたマウス(FBW7-loxp)の交配を行い、破骨細胞特異的にFBW7を欠損するマウス(OC-FBW7KO)の作出を行っている。今後は作出したマウスの骨形態計測などのin Vivo解析を行うとともに、同マウスの骨髄から破骨細胞の形成を行い、破骨細胞分化課程におけるFBW7ユビキチンライゲースの役割を明らかにして行きたいと考えている。また、FBW7以外の候補としてあがってきたユビキチンライゲースのなかにも興味深い分子が幾つか見られるのでそれらの分子についても並行して解析を進めて行きたいと考えている。
平成25年度の研究費の使用計画としては、作出するOC-FBW7KOマウスの維持・解析費用を大きな経費として計上する予定である。具体的には骨切片の作成およびマイクロCT解析を行い、骨形態計測を行う予定であり、これらの解析は共同研究先への旅費もしくは外注による解析を予定している。また、当大学の動物実験施設におけるマウスの維持・管理料も計上する予定である。また、OC-FBW7KOマウスの破骨細胞分化シグナルの解析を行い基質分子の同定ために、抗体およびタンパク解析やクローニングなどの分子生物学的解析の試薬などを消耗品として計上する予定である。その他、研究成果の発表および研究打ち合わせなどのための旅費、論文発表のために投稿料なども計上する予定である。
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J Bone Miner Res.
巻: 28 ページ: 2449-2462
10.1002/jbmr.1936.
cell reports
巻: 1 ページ: 434-443
doi: 10.1002/jbmr.1936.