研究課題/領域番号 |
24791983
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 昭和大学 |
研究代表者 |
安原 理佳 昭和大学, 歯学部, 助教 (20453649)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 関節軟骨 / 再生医学 / 細胞・組織 / 遺伝子 / Wnt/β-catenin / シグナル伝達 |
研究概要 |
顎関節や四肢、指趾の関節を構成する関節軟骨(硝子軟骨)の損傷は痛みと運動障害を招きQOLを著しく低下させる。関節の表面は「表層細胞」と呼ばれる数層の扁平な細胞が存在し、関節軟骨の表面を覆っている。本研究課題では、表層細胞の活性化によって関節疾患の予防、修復再生への応用を目指し、表層細胞の維持にどのようなシグナル制御機構が存在するのかを明らかにすることを目的として遂行されている。本研究課題を通して、表層細胞は、隣り合う軟骨細胞とは異なる形質を示し、関節の機能発現に必須である一方、環境に応じ関節軟骨に分化し得る細胞である事が証明された。また、表層細胞の機能維持に Wnt/β-catenin シグナルが関与し、そのシグナル制御機構において、細胞形態をはじめ多面的な作用を保持するRac-1が、Wntシグナルの活性化を調節する重要な因子であることを示唆する所見が遺伝子改変マウスから得られた。形態学的にも、μCT解析および、組織免疫化学的解析の結果、軟骨特異的Rac1欠損マウスは野生型と比較して骨格の短縮を認め、関節軟骨においては、関節表層がβ-catenin欠損マウスと類似して菲薄化した。表層細胞の機能維持にはWntシグナルの調節機構の解明が必至であるが、Racだけでなく、他のシグナル機構とも相互作用する事が示唆されている。これらの知見は、第30回日本骨代謝学会で研究報告し、1st Asia-Pacific Bone and Mineral Research Meeting -22nd ANZMB Travel award ならびに優秀ポスター演題賞を受賞した。生体により近い関節軟骨の再生を可能にするため、今後、Wntシグナルのポジティブ、ネガティブフィードバックについてさらに詳細な検討を行っていく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
実験手順の前後はあったが、申請時に計画した通り概ね順調に実験を行ってきた。
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今後の研究の推進方策 |
平成25・26年度は平成24年度に明らかとなったシグナル伝達経路の相互作用を明らかにするため、Rac-1を活性化するシグナル伝達経路に着目し、特にα5インテグリンとCa2+シグナルがWntシグナルと相互的に表層細胞の機能発現に及ぼす作用について解析する。さらに、表層細胞特異的遺伝子をターゲットとしたCreER-loxPシステムが必要であり、新規遺伝子改変動物の作出等に着手する予定である。また、関節損傷モデルマウスを用いた関節軟骨の修復機構を検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
これまでに明らかとなった細胞内シグナル伝達系の詳細な解析とともに、受託解析による新規遺伝子改変動物の作成・購入および関節損傷モデルマウスの誘導を試みる。
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