研究課題
関節表層を覆う表層細胞の維持機構の解明を目的として研究を進めてきた。昨年度までに、Rac-1欠損マウスにおいて、形態学的に関節軟骨の菲薄化を認めたことから、Rac-1がWntと相互的に関節表層細胞の維持に重要な因子であることを明らかにしてきた。今年度は、Wntシグナルの下流で重要なシグナル経路の1つであるカルシウムシグナルに着目し解析を行ってきた。培養条件下でカルシウム濃度を変化させた培地で表層細胞を培養すると低カルシウム培地において有意に表層細胞のマーカー遺伝子の上昇が認められた。低Ca培地で培養した細胞では細胞内Caシグナルは低下しており、β-cateninやRac-1の蛋白発現の減少を認めた。これらの知見は炎症に伴うCa濃度の変化を関節軟骨表層細胞が感知し、その機能変化をきたし、関節軟骨の変性や関節破壊の促進あるいは防御に何らかの役割を果たしていることを示唆している。今後さらに、Rac-1及びβ-cateninの下流でのシグナル制御機構について検討していく。一方で、骨端軟骨におけるβ-cateninシグナルの作用について検討するために、レポーターマウスを用いて骨端軟骨におけるβ-catenin局在を明らかにした。さらに、軟骨特異的にβ-cateninを欠損させたマウスにおいて、骨軟骨膜部に異所性の軟骨形成を生じることを見出した。このことはβ-cateninが軟骨細胞の細胞死を誘導することで生じることが明らかとなった。この知見は研究成果1に報告した。表層細胞においてもβ-cateninやその相互作用因子による細胞増殖や細胞死の機構についても解析を行っていく予定である。
2: おおむね順調に進展している
実験手順の前後はあったが、申請時に計画した通り概ね順調に実験を行ってきた。
平成26年度はこれまでに明らかとなったWnt/β-cateninとRac-1やCa2+シグナルの相互作用について表層細胞の機能発現に及ぼす作用をex vivoの系で再現する。また、関節破壊や関節損傷に対する表層細胞の細胞機能発現を検討する。
表層細胞特異的遺伝子をターゲットとしたCreER-loxPシステムの作出や疾患モデルマウスをもちいた実験手順に前後が生じたため。今年度は主にin vitroの系で実験を行った。来年度に実行予定である。表層細胞特異的遺伝子をターゲットとしたCreER-loxPシステムが必要であり、新規遺伝子改変動物の作出等に着手する予定である
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