研究課題
顎関節や四肢、指趾の関節を構成する関節軟骨(硝子軟骨)の損傷は痛みと運動障害を招きQOLを著しく低下させる。関節軟骨の表層を覆う「表層細胞」が、隣り合う軟骨細胞とは異なる形質を示し関節の機能発現に必須である一方、環境に応じ関節軟骨に分化し得る細胞である事、表層細胞の機能維持にWnt/β-cateninシグナルが関与する事から、本研究では、細胞形態、機能制御において多面的な作用を保持するRac-1が、表層細胞の機能制御においてWntシグナルの活性化を調節するのか、また、どのように機序であるのかについて解析をすすめた。軟骨特異的 Rac1欠損マウス(Col2Cre-Rac1flox/flox)の関節表層の形態学的変化とタンパク質の発現を免疫組織化学的手法による解析に着手したところ、生後0日齢のRac1欠損マウスは野生型と比較し、小人症を呈し、軟骨内骨化の遅れを生じていた。さらに、3及び6ヶ月齢のRac1欠損マウス関節軟骨は平坦な形態を示し、関節軟骨の非薄化と表層細胞が減少しており、これらの特徴は軟骨特異的なβ-catenin欠損マウスと類似していた。また、in vitroにおける解析からRac1欠損マウスから採取した関節表層細胞は、野生型に比べAsporinおよびlublicin遺伝子の発現が低く、ルシフェラーゼアッセイの解析よりWnt3aに対するWntレポーター活性の反応性も減少していた。以上の結果から、関節表層の細胞増殖やlubricinの発現はWnt/β-cateninシグナルの活性化を介して調節されていること、さらにβ-cateninの活性化にはsmall GTPaseの1つであるRac1が関与することから、Rac1がWnt/β-cateninシグナルの活性化を調節することで関節の機能維持に関与する事が示唆された。申請者は関節表層細胞を焦点におき、関節疾患の予防、修復再生への応用を目指し、本研究は関節軟骨の維持機構の1つの機序を示すものである。
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