平成24年度には、生後(P)1~5日齢ラット脳幹スライス標本を用いてプレモーターニューロンの様々な存在領域にレーザー光刺激を行った結果、三叉神経上核(SupV)、三叉神経主感覚核(PrV)、三叉神経間領域(IntV)およびPrV背側網様体(dRt)のうち2か所以上の刺激に対して、74%の咬筋運動ニューロン(MMN: 14/19)および69%の顎二腹筋運動ニューロン(DMN: 18/26)でシナプス後電流が誘発された。このような三叉神経運動ニューロンへの収束性入力は、多様な顎運動パターンの遂行に役立っている可能性が考えられたが、このような収束性入力が生後発育に伴いどのように変化するのかは不明である。そこで、平成25年度は、プレモーターニューロンから三叉神経運動ニューロンへの収束性入力の生後発育変化について解析を行った。 P9-12ラット前頭断脳幹スライス標本を用いて、三叉神経運動核周囲の様々な領域をcaged-glutamateを用いたレーザー光誘発性化学刺激を行い、単一MMNおよびDMNに誘発されたシナプス応答様式を解析し、すでに得られているP1-5ラットの結果と比較した。P1-5ラットと同様にP9-12ラットでも複数のプレモーターニューロン領域刺激によって単一のMMNおよびDMNにシナプス後電流(PSC)が誘発され、特に三叉神経上核でシナプス後電流が誘発される確率が高かった。一方P9-12では、低頻度のPSCが誘発される割合はバースト状のPSCが誘発される割合に比べてMMNとDMNでともに高かった。さらに三叉神経上核で応答が誘発される割合はMMNの方がDMNよりも高かった。以上の結果より、複数の領域のプレモーターニューロンからのMMNおよびDMNへの入力パターンは生後発育とともに変化し、顎口腔機能の発育変化に重要な役割を果たしている可能性がある。
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