研究課題/領域番号 |
24791986
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研究機関 | 昭和大学 |
研究代表者 |
福島 美和子 昭和大学, 歯学部, 助教 (90548273)
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キーワード | 唾液腺 / 耳下腺 / 分泌顆粒 / アクアポリン / 細胞内小器官 / 酸性オルガネラ |
研究概要 |
耳下腺の分泌顆粒は未成熟な時期があり、内部は酸性に維持されている。申請者は酸感受性・陰イオン透過性のアクアポリン6(AQP6)が耳下腺分泌顆粒膜上に存在することを発見し、酸存在下で陰イオン流入を行うと考えた。そこで、遺伝子サイレンシングによりAQP6の発現を抑制し、分泌経路異常の発生から仮説を証明する予定である。 昨年度は、初年度に蛍光pH指示試薬であるSNARF-1を基に開発した(SNARF-O2)分泌顆粒特異的な蛍光pHイメージング法を用いて分泌顆粒内部のpHを測定した。結果、分泌顆粒のpHはpH6.8と先行研究の示すとおりであり、pH指示試薬としての機能が確認された。顆粒内部pHはアルカリシフトに抵抗を示したことから、分泌顆粒の耳下腺分泌顆粒が強い緩衝能を持つという新しい知見を得た。 また、初年度に明らかになった問題として、従来から知られている方法ではアデノウイルスベクターをラット耳下腺へ感染させることが困難であることが明らかとなった。昨年度、新しい手法を検討したが、結果として安定した感染結果は得られなかった。そこで、申請時に予定した第二の方策としてのモデル系であるラット耳下腺初代培養細胞系へ実験方法を変更することにした。 さらに、遺伝子サイレンシングの準備としてAQP6遺伝子を安定発現する細胞株の作製のため、GFP蛍光タンパク質にAQP6を連結したベクターを作製した。 これらの成果を踏まえ、次年度はAQP6のshRNAを組み込んだアデノウイルスベクターを作製する。その効果はAQP6安定発現株で評価する。shRNAはSNARF-O2でラベルされた分泌顆粒の数、サイズに影響を与えるかを検討する。さらに、分泌経路異常の発生は非刺激時のアミラーゼ分泌量から評価する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度の計画は、① ラット耳下腺初代培養細胞で分泌顆粒の内部pHの差から未成熟・成熟分泌顆粒の局在を明らかにする、② ①を踏まえて、ラット耳下腺にウイルスベクターを逆行性注入する方法を確立し、in vivoでの分泌顆粒内部pHの差から成熟・未成熟分泌顆粒の局在を明らかにする。というものであった。また、③shRNAの効果判定に用いるため、AQP6安定発現株の樹立を目指した。以下に個別の進捗状況を記す。 ①ラット耳下腺初代培養細胞における未成熟・成熟分泌顆粒の局在の解明:初年度に開発した分泌顆粒特異的な蛍光pHインジケーター・SNARF-O2を用い、ラット耳下腺初代培養細胞における未成熟・成熟分泌顆粒の局在を検討した。ラット耳下腺初代培養細胞に、分泌顆粒に特異的なHaloTagレポータータンパク質(SS25H)を発現させ、SNARF-O2でSS25Hをラベルし、顆粒内pHを半定量的に解析した。結果、先行研究の示すとおり、分泌顆粒内部はpH6.8付近に維持され、かつ内部には強い緩衝作用が働くことが示唆された。②ラット耳下腺に対するウイルスベクターの逆行性注入法の確立およびin vivoでの分泌顆粒内部pHの検討:ラットの耳下腺開口部からアデノウイルスベクターを逆行性注入する方法を検討した。しかし、ウイルス液は口腔内に流出し、注入は不可能だった。③AQP6遺伝子の安定発現株の作製:AQP6遺伝子に対するshRNAの効果を検討するため、AQP6遺伝子の安定発現株の作製を行った。腎臓のTotal RNAから精製したAQP6のcDNAをpEGFP-C1およびAcGFP-N3ベクターに組み込んだ2種類のベクターを作製した。④その他:研究の実績は歯科基礎医学会および67th Symposium of General Physiologyで学会発表した。
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今後の研究の推進方策 |
昨年度の実績を踏まえ、実験①~③の継続方針および④最終年度の方策を決定する。 ①ラット耳下腺初代培養細胞における未成熟・成熟分泌顆粒の局在の解明:SNARF-O2のラベル量を増やし、未成熟・成熟分泌顆粒の弁別を決定する。 ②ラット耳下腺に対するウイルスベクターの逆行性注入法の確立およびin vivoでの分泌顆粒内部pHの検討:ラットにウイルスベクターを播種する手法は中止とし、第二案として想定した初代培養細胞での解析を続行する。 ③AQP6遺伝子の安定発現株の作製:HEK293細胞を用いてGFP-AQP6およびAQP6-GFP発現株を作製する。 ④最終年度の方策:AQP6のshRNAを組み込んだアデノウイルスベクターの作製を行う。AQP6安定発現株で検討し、GFP蛍光強度の減弱から効果を判定する。次に、ラット耳下腺初代培養細胞にSS25Hを発現した上で、AQP6のshRNAを導入し、分泌顆粒の形態、数、培養上清へのSS25Hおよびアミラーゼの異常分泌の発生を検討する。
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