耳下腺の分泌顆粒は未成熟な時期があり、内部は酸性に維持されている。申請者は酸感受性・陰イオン透過性のアクアポリン6(AQP6)が耳下腺分泌顆粒膜上に存在することを発見し、酸存在下で陰イオン流入を行うと考えた。前年度までの結果より、1.ラット耳下腺初代培養細胞内での未成熟分泌顆粒の検出方法の改善、2.GFP蛍光タンパク質とAQP6遺伝子を用いた融合タンパク質の作製、3.shRNAを用いたAQP6遺伝子サイレンシングがラット耳下腺初代培養細胞内での未成熟分泌顆粒の形成と機能に与える影響の検討を行った。1.についてはラベリング量を変えても未成熟分泌顆粒と思われる顆粒の検出には至らず、別の検出方法を検討する必要が生じた。2.は融合タンパク質を作製したが、細胞内で予想される局在と機能を見いだせなかったことから、融合方法の再検討が必要と考えられた。3.についてはshRNA核酸とアデノウイルスベクターのライゲーションを準備しており、shRNAの効果については2.の問題を修正後に検討予定である。 以上の結果より、ラット耳下腺初代培養細胞内においては未成熟分泌顆粒の可視化をpHを指標に行うことは困難である可能性が見出された。また、AQP6遺伝子サイレンシングが唾液腺分泌顆粒に与える効果については助成終了後も研究を独自に継続し、結果の公表を行う必要があると考えた。
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