平成24-25年度に、交感神経細胞-骨芽細胞および感覚神経細胞-骨芽細胞の両共培養系を確立し、局所電気刺激による神経選択的な刺激により神経細胞での細胞内Ca濃度上昇に続き、隣接する骨芽細胞でも細胞内Ca濃度上昇が起こることを確認した。骨芽細胞でのCa上昇は交感神経細胞-骨芽細胞共培養系においてはα1-アドレナリン受容体遮断薬により阻害された。一方で感覚神経細胞-骨芽細胞共培養系においてはグルタミン酸受容体遮断薬によって阻害された。これらの結果から神経細胞と骨芽細胞間に遠心性の直接的な情報伝達経路が形成されること、その伝達物質として交感神経ではノルアドレナリン、感覚神経ではグルタミン酸が重要な役割を果たすことが示唆された。 平成26年度の研究においては両共培養系を用いて、骨芽細胞から神経細胞への求心性情報伝達の有無について検討した。ブラジキニンの潅流適用による骨芽細胞選択的な刺激によって骨芽細胞だけではなく交感神経および感覚神経細胞でも細胞内Ca濃度上昇が観察された。神経細胞でのCa上昇は細胞外Caの除去、開口分泌阻害薬によって抑制され、gap junction阻害薬によっては影響を受けなかった。さらに神経細胞でのCa上昇はATP受容体であるP2X、P2Y受容体の非選択的阻害薬およびP2X7選択的阻害薬によって抑制される一方、グルタミン酸受容体阻害薬によっては影響を受けなかった。これらの結果からATPの放出を介して骨芽細胞から神経細胞への求心性の情報伝達が起こることが示された。 以上の結果より交感神経細胞-骨芽細胞および感覚神経細胞-骨芽細胞が双方向性に直接的な情報伝達経路を形成し得ることが明らかとなった。 他に、骨芽細胞に機械刺激を与えることでグルタミン酸放出が起こること、これは自己分泌的に作用し、自己の細胞内Ca上昇において重要な役割を果たしている可能性を見出している。
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