研究課題/領域番号 |
24791999
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
中山 真彰 岡山大学, 医歯(薬)学総合研究科, 助教 (10579105)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 歯周病原細菌 / 歯周炎 / シグナル伝達 / 病原因子 |
研究概要 |
本研究では、Porphyromonas gingivalis (Pg)の産生するヘモグロビンレセプター(HbR)タンパク質の宿主細胞に対する新規作用を調べ、歯周炎発症における役割を明らかにすることを目的とする。Pgが産生するHbRタンパク質と歯周病態の関連性は未だ報告されていないため、HbRタンパク質による宿主細胞における作用解析を行ない、新たな病原因子としての分子基盤を確立する基礎研究を行なった。具体的には、1)HbRタンパク質による宿主細胞内シグナル伝達・タンパク質発現解析、2)HbRタンパク質の宿主細胞受容体の同定と機能解析、3)HbRタンパク質の細胞内侵入と細胞内挙動の解析、以上3点を中心に研究を行い、研究項目1)に関して、HbR刺激によるIL-8産生に繋がる細胞内シグナル伝達経路の詳細を示した。結論として、HbRを歯肉上皮細胞に作用させると、MAP kinase(p38, Erk1/2)の活性化を引き起こし、転写因子ATF-2, CREB, NF-kBの活性化を通して、[p38/CREB], [Erk1/2/ATF-2, NF-kB]の経路によりIL-8産生を誘導していることが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Porphyromonas gingivalis (Pg)が産生するHbRタンパク質による宿主細胞における作用解析を行ない、新たな病原因子としての分子基盤を確立する基礎研究を研究期間内の実施計画に書した。計画項目の「HbRタンパク質による宿主細胞内シグナル伝達・タンパク質発現解析」の研究に関して、申請者は、HbR刺激によるIL-8産生に繋がる細胞内シグナル伝達経路の詳細を示した。HbRを歯肉上皮細胞に作用させると、MAP kinase(p38, Erk1/2)の活性化を引き起こし、転写因子ATF-2, CREB, NF-kBの活性化を通して、[p38/CREB], [Erk1/2/ATF-2, NF-kB]の経路によりIL-8産生を誘導していることが明らかとなった。以上の研究成果は、本研究計画の項目1-3)の項目1)に該当している。IL-8産生に繋がる伝達系は一細胞内でも多様であるが、HbRによって細胞が活性化され、IL-8産生の誘導に至る経路を示せたことは、大きな進展であると考えている。その理由としては、HbRによる宿主細胞側への作用はこれまでにマクロファージ系細胞に対しての報告のみであったことから、それ以外の細胞でHbRがIL-8の産生などの生理作用を起こすことを明らかにしたためである。
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今後の研究の推進方策 |
次年度の研究計画は、「研究項目1)HbRタンパク質による宿主細胞内シグナル伝達・タンパク質発現解析」を引き続き行なっていくが、IL-8産生といった炎症性のケモカインを発現したことにより、2)及び3)の研究も随時行なうことを考えている。 2)HbRタンパク質の宿主細胞受容体の同定と機能解析 3)HbRタンパク質の細胞内侵入と細胞内挙動の解析 特に研究項目2)の受容体の探索は、HbRが宿主細胞への最初に作用する物質であることから、病原因子の機能解析を詳細に行なっていく上では、重要な研究となると思われる。また受容体が明らかになれば、HbRの受容体への結合を阻害する薬剤の開発への効用なども期待でき、新たな歯周炎治療に貢献できるものと思われる。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度の研究計画に沿って、「研究項目1」HbRタンパク質による宿主細胞内シグナル伝達・タンパク質発現解析」を引き続き行なっていくが、IL-8産生以外の発現タンパク質の解析を行なうなど、遺伝子発現解析のために委託解析を予定している。さらに研究項目2)及び項目3)の研究も随時行なうことを考えていることから、P. gingivalis由来のHbRの精製を試みることを計画している。従って、タンパク質精製の試薬、器具の購入を予定している。また細胞培養用の試薬、器具も常時購入する予定である。
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