研究概要 |
本研究では、Porphyromonas gingivalis (Pg)の産生するヘモグロビンレセプター(HbR)タンパク質の宿主細胞に与える影響について調べ、歯周病における炎症応答における役割を明らかにすることを目標として研究を行った。Pgが産生するHbRタンパク質は歯肉上皮細胞に作用して、細胞内シグナル伝達応答MAP kinase(p38, Erk1/2)や転写因子ATF-2, CREB, NF-kBの活性化を通して、interleuikin-8の産生を誘導した。また詳細な経路としては、[p38/CREB], [ERK1/2/ATF-2, NF-kB]の経路を主に活性化し、IL-8産生に至ることが明らかとなった。この研究は、Infection and Immunity, 2014 Jan;82(1):202-211に掲載された。HbRタンパク質の歯肉上皮細胞における受容体に関しては、継続して研究を行っており、タンパク質性のものが認められている。しかしそのタンパク質の同定には至っておらず、今後はHbRタンパク質受容体の同定を行ない、その結合タンパク質がIL-8産生などの宿主細胞応答に関わる受容体かどうか検討していく方向である。ところで、HbRタンパク質をコードする本来の遺伝子は、Pgの主要病原因子である病原性プロテアーゼジンジパインである。平成26-27年度の研究費申請にはこのジンジパインの新規な病原発現作用を明らかにしていくことを計画している。最終的には、ジンジパイン遺伝子の機能、特に歯周病態形成に関わる役割について、ジンジパインやHbRタンパク質の機能から病態の分子メカニズムの解明を目指す。
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