研究課題/領域番号 |
24792002
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
中村 優子 九州大学, 歯学研究科(研究院), 助教 (00610023)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 咀嚼運動 / 手指運動 |
研究概要 |
近年のEEGを用いた機能画像研究では、手の反復運動に比べ、咀嚼運動を行うと、その後の短期記憶課題の正答率が向上し、記憶・認知機能関連の活動が高まったと報告されている。しかし、咀嚼運動で特異的に誘発される記憶・認知機能領域は未だに確認されていない。よって、咀嚼運動の比較対象として、咀嚼運動と同等の負荷を伴う運動を決定し、その運動が短期記憶課題の成績に及ぼす影響を、咀嚼運動が及ぼすものと比較する必要がある。 本年度は、咀嚼運動と同等の負荷を伴う運動と咀嚼運動の決定を行った。fMRIで脳活動を計測する場合、咀嚼運動による頭部の動きがアーティファクトを発生し、実験結果の精度を低下させることが知られている。よって、頭部の動きをできる限り低減するため、ガム咀嚼、タッピング、クレンチングといった様々な咀嚼運動を検討した。その結果、開口を伴わないタッピングが適していることがわかった。 次に、開口を伴わないタッピングと同等の負荷を伴う運動(手指の回転運動、指のタッピング運動など)を検討した。それぞれの運動負荷の評価は、各運動に関わる筋肉の血流増加量を測定して比較した。血流増加量の計測には、近赤外光を用いたレーザー組織血液酸素モニターによって行った。開口を伴わないタッピング時には、両側の咬筋を測定した。手指のタッピングの場合、深指屈筋を測定した。タッピングに参加する手指の数が2本の場合、開口を伴わないタッピングと同程度の血流変動を認めた。よって、開口を伴わないタッピングと同等の負荷を伴う運動として、第3,4指のタッピングを用いることとした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
倫理委員会申請が遅れており、実験課題が決定しても、fMRIデータ取得に至らなかったため。
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今後の研究の推進方策 |
現在、倫理委員会はプレ診査が終わった段階で、本審査で許可か出ればfMRIデータが取得できる段階である。 これを踏まえ、次年度では、短期記憶課題に対し、「咀嚼」と「咀嚼と同等の負荷を伴う手指のタッピング運動」のそれぞれが、どのような影響を及ぼしているのか、fMRIによる脳活動計測によって検討する。fMRIより、咀嚼運動と関連する記憶・認知機能領域を検出し、これが、咀嚼運動に特異的であるかどうか、対象運動(手指のタッピング運動)と比較検討する。また、これらの認知・機能領域は、咀嚼運動領域、もしくは対象運動領域とどのような機能的神経回路を形成しているか解明する。このため、DCM解析を代表とする脳領域間結合解析を行い、記憶・認知機能を亢進させる咀嚼運動特異的神経回路の存在を検討する。 更に、咀嚼運動をマウスピースなどで阻害した場合、短期記憶課題の成績に影響を及ぼすのかどうか検討する。もし、影響が確認できた場合、マウスピースでの咀嚼阻害前後で脳活動がどのように変化するのかfMRIによる脳活動計測によって検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
fMRIデータ取得の際のMRスキャナ使用料、被験者への謝金、研究打ち合わせのための旅費、データ保存用のハードディスクに使用予定である。
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