研究実績の概要 |
本研究において、ヒト口腔がん細胞株POT-1, OSC19, OSC20, OSC40, OSC70, SAS, HSC-2 などを用いてAldefluor 法により、ALDH1陽性細胞を分離した。ALDH1陽性細胞は、免疫不全マウスにおいて高い造腫瘍能を示し、高い幹細胞マーカー発現を示し、ALDH1陽性細胞にがん幹細胞が濃縮されている事が確認された。 がん幹細胞分子メカニズムを解明する為、cDNAマイクロアレイ法を用いてトランスクリプトーム解析を行った。その結果、口腔がん幹細胞には SPRR1B遺伝子が高発現することを見出した。SPRR1B過剰発現および遺伝子ノックダウンにより、SPRR1Bには造腫瘍能に関わる機能が存在する事が示唆された。次にSPRR1B下流分子を検索するため、SPRR1B過剰発現およびSPRR1Bノックダウンによるトランスクリプトームを解析することにより、RASSF4を見出した。RASSF4 はRASシグナルを負に制御する癌抑制遺伝子である。ウエスタンブロット法によりSPRR1B はRASSF4発現を抑制することにより、RASシグナルを更新することが確認された。当該結果は、口腔がん幹細胞が、SPRR1B分子を用いることにより、RASシグナルを活性化し、造腫瘍能に関わっている事を示唆する。 さらに、口腔がん臨床検体を用い、免疫組織化学染色にて検討を行った。ALDH1陽性例は高いリンパ節転移を示した。in vivo におけるがん幹細胞がリンパ節転移に関わっている可能性が示唆された。しかしながら、SPRR1B染色と、患者生命予後、リンパ節等のパラメーターとの関連性は見られなかった。
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