シスプラチン(CDDP)の細胞内外への輸送機構を解明し、薬剤耐性癌細胞における耐性機構を明らかにすべく研究を行ってきた。CDDPの輸送機構には銅トランスポーターの関与が示唆されている。そこで、CTR1およびATP7AとCDDP耐性との関連を検討してきた。耐性機序の異なる細胞株A2780(CDDP感受性株)と2780CP(DNA除去修復能亢進によるCDDP耐性株)、およびKB(CDDP感受性株)とKBR/1.2(CDDPの細胞内蓄積量減少によりCDDP耐性を示す)を使用した。これまでに、ATP7AはA2780および2780CP間では発現に差が認められないが、KBに比べてKBR/1.2ではATP7Aの発現が低下していること、CTR1はA2780に比べて2780CPでは低発現しているが、KB、KBR/1.2では差が認められないことを確認した。また、CDDP投与によって、KBR/1.2では、CTR1の発現に変化は認められないが、ATP7Aが高発現することが確認された。 また、電子顕微鏡を用いて細胞内のPt分布の探索を行なった。Ptの局在を特定することは、トランスポーターのCDDP輸送システムやその他の輸送機構の詳細を解明する為の足がかりになると考える。細胞内に取込まれたPtを検出するため、高濃度のCDDPを3~24時間投与し、試料を作成した。その結果、細胞種により細胞内での集積部位に相違が認められた。
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