研究課題/領域番号 |
24792008
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
川戸 貴行 日本大学, 歯学部, 准教授 (50386075)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | IL-18 / IL-18 binding protein / GM-CSF / RAW264.7 / CD4+ Tリンパ球 / 破骨細胞 |
研究概要 |
Interleukin (IL)-17刺激を受けたRAW264.7 (RAW) 細胞が産生するIL-18関連因子が,IL-18誘導性のCD4+Tリンパ球によるgranulocyte macrophage colony-stimulating factor (GM-CSF) 産生に及ぼす影響を検討した。RAW細胞をIL-17で刺激すると, IL-18と受容体の結合を促進するIL-18 receptor accessory protein (RAP) の発現が増加したが,培養上清中のIL-18RAPのレベルにIL-17刺激の影響は認められなかった。一方,RAW細胞はIL-18と受容体の結合を阻害するIL-18 binding protein (BP) を発現すること,上清中のIL-18BPのレベルはIL-18RAPのレベルに比べて高いこと,およびRAW細胞のIL-18BP産生は,receptor activator of NF-kappa B ligand (RANKL) 刺激で増加することが明らかとなった。次に,RAW細胞由来のIL-18BPが,IL-18誘導性のCD4+Tリンパ球によるGM-CSF産生に及ぼす影響を検討した。無刺激のRAW細胞由来の上清の存在下で認められたIL-18誘導性のCD4+Tリンパ球によるGM-CSF産生増加は,RANKL刺激したRAW細胞由来の上清の存在下では認められなかった。以上の結果から,RANKL刺激を受けたRAW細胞由来のIL-18BPは,IL-18とCD4+Tリンパ球のIL-18受容体の結合をブロックし,IL-18によるGM-CSF産生誘導を阻害することが示唆された。また,骨代謝の関連実験としてAngiotensin II が骨芽細胞のmitogen-activated protein kinase 経路を活性化させることを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究1年目では,研究計画時に予想していた,IL-17刺激を受けたRAW細胞におけるIL-18 RAPの発現増加は確認されたが,IL-17刺激を受けたRAW細胞由来の培養上清中のIL-18 RAPのレベルの上昇は確認されなかった。一方,本実験で,RAW細胞がIL-18 BPを発現すること,ならびに,RANKL刺激を受けたRAW細胞の培養上清中では,IL-18 BPのレベルが上昇することを新たに見出した。IL-18BPは遊離型のタンパクとして細胞外に分泌されるのに対して,IL-18RAPは主に膜結合型タンパクとして細胞膜上に認められる。すなわち,細胞内と培養上清中におけるIL-18RAPとIL-18BPのレベルの相違は,両タンパクの発現形式の違いによるものであると推察される。このように,IL-18 RAPについては研究計画時の予想とは異なったが,関連因子であるIL-18 BPに着目することで状況を打開し,すでに研究2年目に向けての実験の方向性を定めるに至っている。また,関連実験においては,骨代謝に影響する生理活性物質であることが予想されるAngiotensin IIが骨芽細胞の細胞内シグナル伝達経路に及ぼす影響について検討し,得られた結果を用いた論文が海外学術雑誌に掲載されるに至っている。本関連実験で検討した細胞内シグナル伝達経路は,研究2年目に,RAW細胞由来の上清存在下でIL-18刺激を受けたCD4+Tリンパ球においても検索を予定しており,分析条件の確立につながっている。
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今後の研究の推進方策 |
IL-18は,IL-18受容体に結合後,細胞内のMAPKシグナル伝達経路を介してその刺激が伝達される。また,IL-18は,転写因子であるnuclear factor (NF)-kappa Bの核内移行を促進する。そこで,研究2年目では,RAW細胞由来のIL-18 BPの存在下および非存在下でCD4+Tリンパ球をIL-18刺激して,細胞内のMAPKシグナル伝達の活性化,ならびにNF-kappa Bの核内移行を調べ,IL-18 BPがIL-18によるCD4+Tリンパ球のGM-CSF産生誘導を阻害するメカニズムを検討する。細胞は研究1年目と同様に,破骨細胞前駆細胞としてRAW細胞を,CD4+Tリンパ球としてマウス脾臓由来のリンパ球を分化誘導した細胞を用いる。RAW細胞をRANKLの刺激下あるいは無刺激下で培養後,上清を回収する。次に,それぞれの条件で得られた上清の存在下で,CD4+Tリンパ球をIL-18刺激後,CD4+Tリンパ球の細胞内タンパクと核内タンパクを分離,回収する。細胞内タンパクにおけるextracellular signal-regulated kinase 1/2,p38およびc-jun N-terminal kinasesのリン酸化,ならびに核内タンパクにおけるNF-kappa BレベルをWestern blottingで調べ,RAW細胞由来の培養上清中のIL-18 BPのレベルの相違が,IL-18刺激によるCD4+Tリンパ球内のシグナル伝達に及ぼす影響を検討する。さらに,RANKL刺激したRAW細胞の培養上清中に含まれるIL-18 BPによって抑制が確認されたシグナル伝達経路については,その阻害剤の存在下でCD4+Tリンパ球をIL-18刺激して,IL-18 BPの存在下におけるIL-18刺激と同様のGM-CSF産生誘導の抑制が認められるかを検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度に予定している実験の大部分は,申請者が所属する研究室の施設に設置されている機器を用いて実施する。従って,物品費は,実験に使用する消耗品の購入に使用する予定である。本研究で得られた結果を学術雑誌に投稿中であり,論文掲載が許可された際に支払う投稿料および論文別刷料,また,学会発表の際の学会参加費および学会年会費の支払に必要となる費用を,その他の経費として計上した。また学会発表のための旅費を計上した。
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