研究課題
破骨細胞の炎症性サイトカイン産生および骨吸収関連酵素発現に及ぼすLPAの影響について検索した結果、LPAは炎症性サイトカインであるIL-1betaのタンパク発現と骨吸収関連酵素の発現に影響を及ぼさなかった。仮説と異なる実験結果が得られた原因として、LPAは細胞培養に必要である血清中に多く存在するため、LPA刺激時に血清濃度を通常の培養よりも濃度を下げなければならない。しかし、破骨細胞を細胞培養によって分化・成熟させるためには血清の存在が必須である。したがって、今後実験条件についての再検討が必要であると考えられる。また、分化・機能発現によって上昇する因子が細胞の分化状態によって変化すると考えられるので、転写因子やマーカーなどの検索をさらに詳細に行うことを検討する予定である。LPAは骨芽細胞において、細胞外ATPがP2X7受容体を活性化することにより産生し、産生されたLPAが骨形成を促進すること、さらに細胞外ATPはメカニカルストレスによって産生されるということがすでに報告されていることから、関連実験として申請者は、メカニカルストレスが骨芽細胞の骨形成に及ぼす影響について検索することを企図した。具体的には、メカニカルストレスとして用いた牽引力は、骨芽細胞の細胞外ATP産生を促進し、産生されたATPのオートクリン作用によってP2X7受容体を活性化し、骨形成の促進および細胞外マトリックス発現を促進するという実験結果が得られた。
2: おおむね順調に進展している
上記に記載した実験実績は、交付申請書に記載した平成25年度の研究実施計画を達成することはできなかったが、関連実験であるメカニカルストレスが骨芽細胞の骨形成に及ぼす影響については、興味深い結果が得られ、さらに現在研究結果を論文にまとめる予定であることからこのような自己評価に至った。
本研究課題においては、実験条件の再検討を行う予定である。さらに関連実験に関しては、メカニカルストレス負荷によって活性化されるP2X7受容体の骨形成関連因子おける制御機構に関して検索する予定である。具体的には、骨芽細胞のP2X7受容体が活性化されることにより産生されるLPAおよびプロスタグランジンE2の阻害剤を用いて、骨形成能、細胞外マトリックスタンパク発現、骨形成に関連する酵素活性の検索を行いたいと考えている。
昨年度は購入した消耗品が思ったより安く購入できた為、次年度に繰り越した。消耗品として細胞培養用試薬(培地、細胞培養用プレートなど)、遺伝子検索用試薬等を購入するために今年度研究費および繰り越し費を使用したいと考えている。
すべて 2014 2013
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件)
J Bone Miner Res.
巻: 29 ページ: 725-34
doi: 10.1002/jbmr.2068
J Biol Chem.
巻: 288 ページ: 35346-57
doi: 10.1074/jbc.M113.507525