研究課題/領域番号 |
24792010
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
CUENO Marni 日本大学, 歯学部, ポスト・ドクトラル・フェロー (20569967)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | HA / インフルエンザ / OGS |
研究概要 |
歯科医療においてインフルエンザは、感染経路および予防の観点から極めて重要な感染症であるにもかかわらず、歯科領域のインフルエンザ研究はほとんど行われていない。 インフルエンザウイルスのヘマグルチニン(HA)抗原と宿主細胞レセプター・シアル酸との結合は感染の成立に必須である。HAタンパクは異なる16種類のサブタイプからなるが、特に、HA1とHA2は重要で、遺伝子の変異の割合が大きく、その構造変化はウイルスの感染性と病原性に多大な影響を与える。しかしながら、HAの構造とウイルスの感染性との関連についてはよくわかっていない。本研究ではウイルスHA配列に注目し、特に糖鎖修飾とアミノ酸変化がHA構造に及ぼす影響について解析を行った。 Asn-Asn-Ser-ThrからなるHA overlapping glycosylation sequons (OGS)はほとんどのウイルスが保有している。そこで、OGSの糖鎖修飾状態を調べるために、OGSをトマト内に発現できるベクターを構築した。実験の結果、OGSがトマトのカルスと葉内で組織特異的にN-glycosylationを受けている事が解った。また、HAのB-loop構造に注目し、構造計算科学を用いてHAとウイルスの感染性について検討した。その結果、興味深いことに、B-loopの88番目のアミノ酸残基がヒト感染性ウイルスではリジンに、豚感染ウイルスではヒスチジンに、鳥感染タイプではアスパラギン酸と種に応じてよく保存されている事がわかった。また、このアミノ酸の違いが、宿主への感染に最も重要なHAのreceptor binding siteのポケット構造の変化に影響を及ぼしている事も分かった。さらに、細菌由来のノイラミニダ―ゼがウイルス感染に影響を及ぼす可能性に関しても研究を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
関連する研究の成果をいくつかの学会で発表する事ができた。また、成果をまとめ、論文として発表する事が出来たため。さらに、成果の一部を新たな論文として作成中である。
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今後の研究の推進方策 |
OGSキメラ蛋白のマウスにおける免疫反応を調べるために、カルスからキメラ蛋白の精製を行う。キメラ蛋白の発現はWestern blottingで解析する。その後、蛋白をマウスに注入し経時的に血液を回収することで、OGSキメラ蛋白に対するマウスの免疫応答を解析する。また、HAの構造解析においては、今年度と同様の解析をパンデミック型ウイルスについて検討する。その結果とパンデミックとの関連性を検討する事で、B-loopのアミノ酸が保存されている意義、またパンデミックに及ぼす影響を調べる。細菌ノイラミニダ―ゼの影響は、実際のウイルスを用いたプラ―クアッセイを行い解析を進める。
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次年度の研究費の使用計画 |
昨年度、研究が効率よく出来たため繰越金が発生したが、それはOGSキメラ蛋白の発現を解析するためのWestern blotting等の生化学解析にあてる。本年度は、電気泳動試薬や抗体等の試薬を購入するとともに、昨年度と同様トマトの葉を育てるシステム維持の経費を計上する。今年度は新たに、動物購入のための費用が必要となる。細菌由来のノイラミニダ―ゼがウイルス感染に及ぼす影響を調べるために、細胞及びウイルス培養に関わる試薬等を購入予定である。また、研究成果の発表と公表のために学会参加旅費と参加費と論文作成、及び論文作成関係費(英文校正や掲載料、別刷代)が必要となる。
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